FoodVol.1

連   載

You are what you eat
あなたは食べたものでできている

第1回

栄養バランスって、なに?
今日からできるヘルシープレートの作り方

—超しっとり サラダチキン レモンペッパー風味—

「健やかなカラダとココロをつくるには、日々の食事マネジメントが欠かせません」。そう語るのは、米国政府認定ホリスティックヘルスコーチの資格を取得し、食事や運動、マインドフルネスの領域で幅広く活躍するMonamiさんです。「食事と健康」をテーマにしたこの連載では、NY発の新しい栄養学の知識を交えながら、みなさんが今すぐ実践できる食事術をたくさんご紹介していきます。
今回のレシピはこちらから!

カラダと食べ物の関係

「You are what you eat」ということわざを、知ってますか。日本語にすると、「あなたは食べたものでできている」という意味です。最新の栄養学の世界で、合言葉のごとく使われています。

身も蓋もないな、と思った方は、想像してみてください。

わたしたち人間のカラダを構成する筋肉、臓器や骨などの組織や、活動をする上で必要なエネルギーは、食べ物に含まれる栄養素によってつくられます。つまり、わたしたちは日々の食事の積み重ねでできています。

カラダに必要な栄養素が不足することも、不必要な栄養素が過剰になることも、健康にとってよくないことが科学的に証明されてきました。目新しさには欠けるかもしれませんが、バランスが整った食生活を実践することが、健康管理における「基本の基」なのです。

「炭水化物を抜いてみたけど、体重が思うように減らないし、調子も崩れた」
「仕事で忙しいので、ついついコンビニ飯やインスタント食品ばかり食べてしまう」
「結局、何が本当にいい食事なのかわからない」

こういった悩みをよく聞きます。一見、内容はそれぞれ違いますが、因数分解してみると、ひとつの大きな根っこにぶつかります。それは、情報と選択肢があふれる現代の世の中で、多くの人が何を食べればいいのか分からなくなってしまっている、ということです。

出ては消えてを繰り返す「〇〇を抜いて10キロ痩せる」「〇〇だけ食べていれば健康になる」といった類いの食事法。文字通り玉石混合な情報にやみくもに飛びついて、期待した効果を得られないどころか、逆に、体調が悪化してしまったというエピソードは尽きません。

普段料理をする時間や習慣がない人にとって、コンビニエンスストアやスーパーの惣菜や弁当は、簡単に手に入ってとても便利。ですが、最近は種類も豊富で、その中から健康的なものを選択するのは、正しい知識なくして容易ではありません。空腹を満たすことに主眼を置くばかりに、使われている食材や、含まれる栄養価については深く考えず、ただなんとなく手に取っている人も少なくないでしょう。

そんな情報過多で飽食の時代を生きるわたしたちが今、食を通じた健康を考える上で求められているのは、原点に立ち返ること。食べることとカラダの関係を、理解しイメージし、そしてその上で、自らの食生活と丁寧に向き合うことだと思います。

栄養素の役割

ここまで読んでみて、そもそも、栄養素ってなんだっけ?わたしたちのカラダとどんな関係があるの?と思った方。ここで、知ってるようで意外と知らない、わたしたちが毎日欠かせない栄養素と、その役割について確認しておきましょう。

栄養素とは、食品中に含まれているさまざまな物質のうち、人間が生命活動を営むために必要な成分です。カラダの中に取り込まれると、

1. エネルギー源になる
2. カラダの組織をつくる
3. カラダの調子を整える

という3つの大きな働きをします。

タンパク質、炭水化物 (糖質)、脂質を3大栄養素と呼び、これにビタミンとミネラルを加えたものを5大栄養素といいます。車に例えると、3大栄養素がボディとガソリン、ビタミン・ミネラルはエンジンオイルやブレーキオイルに当たります。このうち、どれかが欠けても、または多過ぎても、車はうまく走りませんよね。人間のカラダも同じです。(ちなみに、炭水化物に含まれる食物繊維は、「第6の栄養素」とも呼ばれ、整腸作用や血糖値を抑える働きなど重要な役割を担っています。)

カラダに必要な栄養素をバランスよく摂ることが、なぜ重要なのかお分かりいただけたかと思います。アンバランスは特定の栄養素の不足または摂り過ぎによって生じますが、近年は、その両方が同時におこる「現代型栄養失調」になる人が増えているといわれています。かつては、十分な食事が摂れず栄養不足に陥る時代でしたが、今は食べていても栄養が偏る、なんとも贅沢な時代です。

例えば、炭水化物が足りないと、脳がガス欠状態になって集中力が低下したり、疲労感の原因になります。タンパク質を摂り過ぎると余った分が尿として排泄されるため、腎臓に負担がかかります。鉄分が不足すると、酸素がカラダに行き届かなくなり、息切れや立ちくらみなど貧血の症状が現れます。

根強い「カロリー信仰」も、現代人の栄養不足を助長しているようです。摂取カロリーが消費カロリーを上回れば太り、摂取カロリーが消費カロリーを下回れば痩せる、というカロリー収支理論にのみとらわれて、食べる量を減らすことだけで体重を管理しようとするのはナンセンス。

ダイエットにとって、摂取するカロリーの「量」と同じくらい「質」が大事だということが、最新の研究で分かっています。どんな栄養素を含んだ食品をどれくらい食べるのか、トータルで考えることが大切なのです。自分に必要なエネルギー量を確保した上で、カロリーの「質」もこだわってみましょう。

マイヘルシープレートの作り方

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)では、総エネルギー量に占める3大栄養素由来エネルギー量の割合目標を示しています。18〜49歳男女の推奨値は、タンパク質が13〜20%、炭水化物が50〜65%、脂質が20〜30%です。

となると、1g当たりタンパク質は4kcal、炭水化物が4kcal、脂質が9kcalだから、1日に食べるべき量はこれくらいで、1食だとこれくらいか…。こう考えると気が遠のきそうですが、大丈夫。毎度の食事で厳密に計算する必要はありません。大体の目安として、頭の片隅に入れておきましょう。

実際の食事の際には、これから紹介するMonami流「マイヘルシープレート」を知っておくと便利です。自分の手を秤として使いバランスをコントロールする「手ばかり法」と、米国農務省の「MyPlate」、ハーバード公衆衛生大学院による「Healthy Eating Plate」といったイラスト型の食事ガイドラインを組み合わせたものです。

まずは、自分の手を使って、1食分の食材の量を計ります。

・タンパク質(肉、魚、卵、豆、ナッツ)
 指を含まない手のひら1枚分~指を含む手のひら1枚分

・炭水化物(米、パン、麺類)
 握りこぶし1つ分

・ビタミン・ミネラル(野菜、キノコ、海藻、果物)
 両手にいっぱい乗るくらい
 ※加熱した野菜はかさが減るので、片手のひらにいっぱい乗る量が目安。

次に、それらの食材を1枚の大きなお皿に盛り付けてください。こうすると、全体のバランスが一目瞭然ですね!お皿の半分が野菜、1/4が肉や魚、1/4が米やパンになっているのが理想です。脂質は、肉や魚にすでに含まれているので、オリーブオイルなどの良質なオイルを調味用にプラスしてあげればバッチリ、マイヘルシープレートの完成です。大きなお皿が家にないという方は、小さなお皿3枚などで代用して、食事バランスの可視化を試してみてくださいね。

ということで、「You are what you eat」連載第1回目の今回は、とにかくバランス、バランスと繰り返してきましたが、最後にとっておきのレシピを1つ。レモンとブラックペッパー風味のサラダチキンをご紹介します。

サラダチキンというと、アスリート向け筋肉増強飯の代表と思われがちですが、良質なタンパク質を含む鶏むね肉は、老若男女、どんな方にもオススメの食材です。栄養だけじゃありません。ミニマムな材料で、ほったらかすだけ。なのに、驚くほどしっとり。味も見た目も、豪華にキマる。手前味噌ですが、言うことなしの一品なんです。

たっぷりの野菜と発酵玄米を添えて、お皿に盛りました。お気付きですか?そうなんです。まさに「マイヘルシープレート」そのもの!みなさんも、ぜひ一度、おうちで試してみてくださいね。

【今回のレシピ】

超しっとり サラダチキン
レモンペッパー風味

材料

鶏むね肉……1枚 (300g前後)
蜂蜜……大さじ 1/2
塩……小さじ 1/2
ブラックペッパー……適量
オリーブオイル……大さじ1
レモン……1/2個

【用意するもの】
耐熱温度100℃のジッパー付き保存袋
蓋つきの鍋

作り方

  1. 鶏むね肉は皮を取り除き、水気を拭いたらフォークで数カ所穴を開ける。
  2. 蜂蜜→塩の順番ですり込む。
  3. 耐熱性保存袋に入れ、オリーブオイルと輪切りのレモン、ブラックペッパーを加えたら、空気を抜くようにして袋を閉じる。冷蔵庫で味をなじませる。 (半日〜一晩)
  4. 調理する前に室温に戻す。鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら火を止める。
  5. 保存袋ごと湯の中に入れ、蓋をして余熱で火を通す。目安は30〜40分。
  6. お好みの厚さにスライスして盛り付ける。袋に残った調味料と肉汁をかけ、レモンも添えて、完成。

Monami
世界最大の栄養学専門学校 Institute for Integrative Nutrition(IIN™)にて米国政府認定ホリスティックヘルスコーチの資格を取得。食事や運動、マインドフルネスを通して、健康で幸せなライフスタイルづくりのサポートをしている。アメリカ、カナダ、フランス、モンゴル、香港での居住経験を生かした異国情緒あふれるヘルシー料理が得意で、レシピ監修やプライベートのフードデリバリーも行っている。趣味はトレイルランニング、ヨガ、ブラジリアン柔術。

参考:
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586560.pdf
https://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/healthy-eating-plate/
https://www.myplate.gov/eat-healthy/what-is-myplate/

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You are what you eat
あなたは食べたものでできている

これからのレシピもお楽しみに

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