ユニファイド・エールラン
雨の日に1000人が走った理由。


2026年4月4日の朝、東京・お台場のセントラル広場に、大勢の人が集まっていました。パラパラと雨粒が落ちてくるあいにくの天気でしたが、集まる人たちの顔はどこか晴れやかでした。この場所に集った彼ら彼女らはこれから特設コースを3時間にわたって走るのです。満開の桜が大会に文字通り花を添えてくれていました。

なぜ、1000人を超える人々は雨の中を走るのでしょう。その答えが、「ユニファイド・エールラン」です。スペシャルオリンピックス日本(SON)が主催するチャリティ・ランイベントとして、2017年以来9年ぶり、8度目となった今回の開催。親子ラン、キッズラン、ユニファイドリレーなど、さまざまな種目が雨天をものともせず実施されました。参加費は、今年6月に都内で開催される「2026年第9回 スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・東京」の大会開催費をはじめとした、スペシャルオリンピックス日本の活動資金として活用されます。
「ユニファイド」とは何か

「ユニファイド(unified)」とは、「統一された」「一体化した」を意味する英語です。スペシャルオリンピックス日本が推進する「ユニファイドスポーツ®」とは、知的障害のある人(アスリート)と知的障害のない人(パートナー)がチームメイトとなり、共にスポーツに取り組む活動のこと。「ユニファイド・エールラン」はその精神をそのまま走るイベントに持ち込んだもので、障害のあるなしという区別が、スタートラインに並んだ瞬間に静かに消えていきます。応援しながら走り、走りながら応援するのです。
有森裕子さんが語る、
「走ること」の本質

このイベントのユニファイドスポーツ®・アンバサダーを務めるのが、元プロマラソン選手で、五輪2大会連続メダリストの有森裕子さんです。なぜ数あるスポーツの中でも「走ること」がユニファイドと相性がいいのでしょう。有森さんに尋ねてみました。
「走ることは全てのスポーツの出発点にある行為です。私は走ることが社会とのつながりを最も表現できるスポーツだと思っています。人数に限りがない。男女も関係ない。大人・子どもも関係ない。国も関係ない、障害のあるなしも関係ない。あらゆる条件を超えて、全員が同じラインに並んで、『ランナー』という一括りでできるスポーツなんです」

そして、エールランを始めた趣旨についてこう話します。「障害のあるなしに関係なくつながりを持ち、共生社会の実現をスポーツで体現・体感してもらいたい。9年ぶりに復活できたことは非常に意味のあることですし、共生社会といってもまだまだ壁があるので、そういう固定観念を取り払うためにも地道な活動を続けていきたいと思います」
なぜ、有森さんは「共生社会」を目指すのでしょうか。「私たちは知的障害のある人たちのためにやっているのではなく、彼らと一緒にやっているんです。彼らも私たちを応援してくれているし、私たちも一緒に応援する。その『共に』という感覚こそが、まさに大事なポイントです。スペシャルオリンピックス日本は『Be with all』という言葉を掲げていますが、まさにその意味合いですね」
小塚崇彦さんが語る、
「雨の記憶」

フィギュアスケートの元五輪代表で、スペシャルオリンピックス日本 ドリームサポーターの小塚崇彦さんも、この日のゲストとして参加しました。小塚さんとエールランの出会いは10年近くさかのぼります。2016年に初めてエールランを走った時、気づけば9周も走っていた…。それほど引き込まれた体験だったと言います。その日、現在の理事長・平岡拓晃さんとも初めて顔を合わせました。「このエールランこそが私とスペシャルオリンピックスのつながりの原点なんです」と小塚さんは語ります。

この日、天気は回復せず春の雨に見舞われ、イベントは1時間半で終了してしまいました。あいにくの天気だったこの日について、小塚さんはこんな言葉を残しました。「今日は初めて会う人たちがたくさんいたと思いますが、一緒に応援し、応援されながら走った。それだけで縁がつながったと思うんです。雨が降ったからこそ、『あの時、めっちゃ雨降ったよね!』という思い出を共有できる仲間がたくさん増えたんじゃないかな。僕はそう思いますね」

小塚さんの口からは「応援」という言葉が何度も出てきました。この応援の力についても、競技人生を振り返りながら語ってくれました。「ちょっと苦しいな、少しサボッてもいいかな、と思う瞬間に、自分を鼓舞してくれるもの。それが声援だと思っています。自分では120%、150%でやっているつもりでも、それは自分がそう思っているだけで、実は100%なんですよね。それを120%、150%に押し上げてくれるものが応援の力じゃないかな」
ゴールした後の顔が、
全部答えだった

雨の中を走り切った人たちの顔には皆、清々しい表情が浮かんでいました。有森さんの言葉を借りるなら、「ただ競技をするだけじゃなくて、何のために走ったのか、その価値を示せる」。それこそこのイベントの核心でしょう。1000人が雨の中を走り切ったという事実が、その価値をそのまま証明していました。もし、チャンスがあれば皆さんも「ユニファイド・エールラン」のスタートラインに立ってみませんか。応援し、応援される。「ユニファイド・エールラン」を体験すると、誰かと体を動かす出発点になるかもしれません。
ユニファイドリレー
部門で
1位を獲得!

走ることが支援につながる「ユニファイド・エールラン」。エニタイムフィットネスは「フィットネスのブランドとして本気で優勝を目指し、大会を盛り上げたい!」との思いでランチームを結成。ユニファイドリレー部門で全44チーム中1位を獲得しました。
雨にもかかわらず、大勢のランナーたちがお台場に集結しました。この日開かれたチャリティ・ランイベント「ユニファイド・エールラン」は、知的障害のある人とない人が一緒に走るチャリティ・ランイベント。応援しながら走り、走りながら応援する。その場にいた人たちが口々に語ったのは、スポーツが持つ「一緒に」という力でした。