ReviewVol.25

インソールを作ってみた!
大切な足を守る生涯の相棒

文・井上英樹(MONKEY WORKS)

以前、半月ほど入院した後、驚くほど脚力が落ちてしまいました。思うように足が上がらず、とぼとぼとしか歩けないのです。これではダメだと思い、ジムでウォーキングやジョギングをして足の筋力を復活させました。アフリカの野生動物は足を痛めると間もなくして淘汰されてしまうそうです。人間界と違って、野生動物には筋力回復の機会はほぼありませんから。私たち人類にとっても、足はとても大切な存在です。

それ故に、毎日使う靴はとても重要なアイテムといえるでしょう。硬い道や冷たい雨、雪から足を守り、衝撃や摩擦を和らげてくれます。ただ、多くの方にとって靴はファッションアイテムの一つですから、足の保護や歩行のサポートよりも、見栄えを優先することもあるでしょう。

先日、登山靴のソールが劣化したので買い替えることにしました。ところが、サイズは合っているはずなのに、靴の中で踵が動き、足が前にずれてしまいます。日常使いなら厚めの靴下を履けば対応できそうですが、アップダウンの多い山で長い距離を歩くことを考えると、最悪の事態しか思いつきません。きっと、下りで指が靴に当たり、痛めてしまうはず。

そこで、以前から興味のあったインソールを作ることにしました。インソールとは足と靴の間に挟む中敷きのこと。靴のフィット感を高めたり、衝撃を軽減したりする役割があります。ネット通販でも購入可能ですが、山とスキーの専門店である『石井スポーツ 神田本館』を訪れました。実を言うと、インソールを選んでもらい、それを靴に合わせてカットする程度に考えていたのですが、担当してくれた下山真さんはとても熱心に私の足を観察してくれました。

人の足には踵、母指球(親指の付け根の膨らみ)と小指球(小指の付け根の膨らみ)という3つの高まりがあります。クッションとなる足のアーチ(土踏まず)とこの高まりのバランスを、歩行時に最適な状態にするためにインソールを使用します。どうやら私の場合、右足の踵が内傾していることが分かりました。また、足幅を優先したサイズを選んだため、踵部分がやや大きいと指摘を受けました。思い返すと、フィット感が高い靴を履く際、右足が痛くなることがありました。どうやら、原因はこの微妙なズレだったようです。

下山さんによる足の長さと幅の計測、ならびに足の状態の確認後、いくつかのインソールを提案してもらいました。私は比較的体格がしっかりしているので、反発性のあるタイプのインソールを選び、踵を安定させるためのスタビライザーを追加しました。

今回、下山さんにご提案いただいたのがインソール専用のバキュームマシンによるカスタムフィット。専用マシンで足裏形状を再現し、熱を加え柔らかくしたインソールを踏みしめることで自分の足の形を写し取ります。最後に靴の形状にインソールをカットして完成です。さて、料金なのですが…

インソール代とスタビライザーで合計13,090円(税込)。

加工代は0円でした。石井スポーツではインソールの定価でカスタムしてくれるのです。さすが、日本の山岳シーンをリードしてきた専門店のこだわりです。靴の形が合えば、普段使っている靴でも利用可能ですので、費用対効果はかなり高く感じました。登山はもちろんですが、ランニングシューズ、スキーブーツなどのインソールにも対応しています(※スポーツに特化する場合は、流用せずに専用のインソールを作ることをおすすめします)。

インソールを敷き、実際に店内を歩くと、これまでの履き心地と全く違いました。靴の感度が高まったと言えば伝わるでしょうか。靴が足をサポートし、靴本来のグリップ力や反発性を感じます。歩くことが楽しくなったのは言うまでもありません。以来、この靴しか履いていません。

普段移動距離が長い、立ち仕事の多い方にもおすすめだと下山さんは言います。また、インソールは外反母趾の予防も期待できるそうなので、足に悩みがある方は信頼できるお店でインソールをカスタムしてみてはいかがでしょうか。

取材協力:石井スポーツ
https://www.ici-sports.com/
石井スポーツでのインソールのカスタムフィッティングは、熟練スタッフが対応します。土日は混むことが多いので、事前にインソールのカスタマイズが可能かを電話で確認することをおすすめします。

※価格やスペックは2023年10月6日の情報です。