眠ることだってトレーニング
寝具をアップデートする

筋肉がある人ほど、
夏は眠れない

運動する人にとって睡眠はどんな位置づけなのでしょうか。
ヒラノさんアスリートに「大切にしているもの」を挙げてもらうと睡眠も入ってくるようになりました。ただ、睡眠時間を確保する以外に何をすればいいのか、寝具はどれを選べばいいのかとなると分からない。しかも一般の方と比べて筋肉量も体型も違うので、悩みの質そのものが違ってくるんです。
競技によっても課題が違います。プロ野球は平日がナイターで、土日はデーゲーム。しかも遠征が多い。日本にいながら時差ボケのような状態になります。競輪は朝や夜にレースがあって、しかもシーズンオフがない。実は筋肉にも体内時計があって、それがずれると運動パフォーマンスが落ちることも分かっています。ですから試合スケジュールを伺った上で、競技特性に合わせた対策をお伝えしています。
筋肉量がある方ほど深部体温が下がりにくいという研究があります。これは脳と内臓の温度で、深部体温が下がらないと人間はなかなか寝つけないし、質のいい睡眠も取れません。アスリートを対象にした研究では、男女を問わず除脂肪体重が多いほど、成長ホルモンが出る最初の90分の深いノンレム睡眠の割合が、一晩を通して低くなってしまう。とくに男性アスリートの睡眠効率については、眠りの浅い80代の男性と同じレベルという研究もあるほどです。
つまり、筋肉がある方ほど寝具に気をつけないといけない。いろいろな競技を担当していますが、睡眠の悩みが一番増えるのは、やはり梅雨から夏にかけてなんです。
部屋は涼しいのに、
布団の中は暑いという矛盾

ヒラノさんまずは寝具を見直していただくことが大切。とくに見落とされがちなのが「寝床内環境」、つまり布団の中の環境です。理想は温度33度、湿度50%といわれていますが、汗をかいて熱がこもると湿度は70%近くまで上がってしまう。部屋は涼しくしているのに、布団の中の環境が悪いせいで睡眠の質が落ちている、ということが起こります。そして布団の中の温度と湿度は、寝具でしかコントロールできないんです。

田中さん私たちが夏商品を作るときにいちばん重視するのも、実は「冷やすこと」ではありません。快適な温度と湿度で眠れること、いかに湿気を逃がすかというところです。触れた瞬間の冷たさも大事ですが、寝ているあいだの寝床内温度、そこで蒸れないことを考えて作っています。
昔ながらのタオルケットや麻の寝具では対応できていないということでしょうか?
田中さんそうですね、以前と比べ、開発依頼は減少傾向にありますね。綿や麻は汗を吸ってくれますが、寝床内温度の改善までは至らない。昔は「夏は暑いから薄手のものを」という感覚でしたが、今は寝室にクーラーをつけますのでその状況ではなくなっています。
今回の商品で使っているのは、熱伝導率の高い素材です。実はこれ、触ると冷たい素材ではなくて、熱を逃がしているんですね。熱伝導率が高く、肌触りが冷たく感じます。ただ、ずっと手を置いていると、冷たさはだんだん鈍っていきます。ところが寝返りを打って人が動くとリセットされて、もう一度戻ったときにまた冷たく感じる。枕を同じ面で使っていると暑くなって、自然と冷たいところを探しますよね。あの感覚に近いです。

ヒラノさん人は一晩に20回から30回、寝返りを打つといわれています。その寝返り自体にも深部体温を下げる役割があるので、夏は寝返りが増えるともいわれています。昔は熱帯夜が少なくて、エアコンなしのタオルケットで良かった。でも今は「エアコンを一晩中つけてください」とアナウンスされる時代です。それが前提になっているのに、寝具だけ昔のまま、というのは無理がありますね。
田中さん昔から「頭寒足熱」と言われます。冷感寝具自体は昔からあったのですが、べたつくものも多かった。ここ数年で「持続冷感」、瞬間的な冷たさではなく、それが持続してくれるものが出てきました。今回のコンフォーターは、熱がこもりやすい部分だけ生地を変えて通気性を上げています。暑いと肌着を着たくなくなりますが、通気性を上げておけば、かけたまま眠れるんです。

マットレス40、
掛け布団40、枕20?
寝具の中で、いちばん大事なものはなんでしょうか。
ヒラノさん私は重要度で言うとマットレスが40%、掛け布団が40%、枕が20%だと考えています。
トレーニングと同じだと思うんです。背中の種目だけをやっていい体ができるかというと、そうではない。部位ごとにメニューを組みますよね。寝具もそれと同じで、「マットレスを買ったからいい」ではなくて、トータルでコーディネートしてほしいですね。
そもそも「良い睡眠をとるための寝具選びのポイント」はどのようなものでしょうか。
ヒラノさん2つあります。1つは、あおむけで寝たときに立ち姿のまま眠れているか。もう1つは、横向きになったときに頸椎から仙骨にかけての背骨がまっすぐかどうかです。
トレーニーは肩幅があるため、横向きになると肩に体重が集中して、肩がつぶれてしまうことがあります。そうすると首だけが落ちて、斜めになった姿勢で眠ることになります。体格がいい方ほど枕も押しつぶされてしまうので、一般体型の方と鍛えている方とでは、寝具の選び方そのものが変わってくるんです。

田中さん枕を作り続けてきて思うのは、人によって感覚がまったく違うということです。高いのが好きな人と低いのが好きな人、硬いのが好きな人と柔らかいのが好きな人、横向きで寝る人とあおむけで寝る人。本当に難しいですね。
ただ、言えることが2つあります。頭を冷やすこと。そして、首を支える部分をしっかりホールドすることです。首元をやわらかい素材だけで作ると、首をのせたときにつぶれてしまい、スマホ首と呼ばれるうつむきの寝姿勢になってしまう。寝るときに立っている姿勢と同じ状況を作らないと、睡眠環境は良くならないんです。
高過ぎる枕は良くない、という話も聞きますね。
ヒラノさんはい。「殿様枕症候群」ですね。高過ぎる枕を使うと首が大きく曲がり、首の後ろを通る椎骨動脈に負担がかかる。それが脳卒中の原因の一つである特発性椎骨動脈解離につながる可能性があると、国立循環器病研究センターが新しい疾患概念として提唱しました。硬過ぎる枕、高過ぎる枕が健康上よくないと分かってきたので、ある程度の柔らかさがありながらホールドはしてくれる、というほうに枕も変わってきた印象があります。
首が痛い、背中が張るという自覚症状がある場合は、枕が合っていないと考えていいですか。

ヒラノさん枕、もしくはマットレスですね。ただ、合っていない枕を使っている方のほうが多い印象です。硬過ぎる、高過ぎる、なかには枕を2つ重ねて寝ていますという方もいらっしゃるんですよ。寝心地だけで選んでしまうと失敗しやすいのが寝具なんです。
寝心地と、合っているかどうかは別なんですね。まずは客観的な視点で寝姿勢を見て、合っているかどうかを確認する。好みはそこから注ぎ込んでください、とお伝えしています。洋服でも、自分の好きな色やスタイルが自分に似合うかというと、そうとは限らないですよね。まず寝姿勢を見て、そのあとに好みを出す。この順番が失敗しにくいと思います。
体が変われば、合う枕も変わる
DEEP COOLのピローは、少し高さがあるように感じました。

田中さんはい、これは中の高さ調整シートを抜いていただければ低くなります。たった1cmくらいのシートなのですが、抜くと感じ方がまったく変わるんです。さらに中に入っているパイプを取ることでも調整できます。後頭部が尖っている方と、いわゆる絶壁の方では合う形が違いますから。中央を凹ませて両脇を高く設計しているので、横を向いたときにも肩がつぶれません。

ヒラノさんこの「高さを変えられる」というのが、私はすごく重要だと思っています。世の中では「オーダーメイドの枕が正解」と思われがちですが、アスリートは体重が大きく変わることがある。フィジークやボディービルの大会に出る方も体重をコントロールされますよね。体重や体型が変わると、合う枕も変わってしまうんです。買ったときに合っていればいい、ではなくて、その都度、自宅で簡単に見直せることが大切になってきます。
枕そのものは、どれくらいで買い替えるものなのでしょうか。

田中さん一般的には、枕の寿命は2年といわれています。10年使われている方は、本当に替えていただいたほうがいい。形状も変わっていますし、汗の蓄積もありますし、しっかり洗えてもいないはずです。枕カバーは下着と一緒だと思ってください。肌に直接つけて寝るものなので、毎日洗わないと……。下着を1週間洗わないことはないですよね。ぜひ、枕カバーも小まめに洗ってください(笑)。
眠っているあいだも、
トレーニングはできる
「眠るのもトレーニング」という言い方がありますよね。

ヒラノさん私は自分のメソッドを「スリトレ」、スリープトレーニングの略でそう呼んでいます。筋肉を大きくするのも、運動の記憶を定着させるのも睡眠時間なので、その時間がないと頑張ったトレーニングが水の泡になってしまう、と選手にはいつも話しています。寝ているだけなのにトレーニングになるなら、おいしくないですか、と(笑)。
一晩に出る成長ホルモンの7割から8割は、寝入りばなの最初の90分で出ることが分かっています。そして運動の記憶は、朝方の浅いノンレム睡眠でしか身につかないともいわれています。だからこそ、トレーニングを楽しんでいる方にこそ睡眠を大切にしてほしいんです。
若い選手は寝なくても体力が持ってしまうところがあります。でも今のうちから気をつけていると、アラサーになったときの体力の落ち方やケガのしにくさが変わってくる。睡眠に気をつけることは自律神経のケアにもつながるので、何もしてこなかった方とは「眠る力」そのものが変わってきます。眠ることもトレーニングなんです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
田中さん睡眠は、質も時間もどちらも大事にしたい。とくに長く眠る時間が取れない人ほど、質を上げるための寝具選びが効いてきます。
ヒラノさん睡眠は「なんとなく体にいいもの」ではなくて、トレーニングの一環です。そう捉えると、使うものも重要になってきますよね。この夏、まずは寝具から見直してみてください。
商品情報

DEEP COOL(ディープクール)
TEIJIN AXIA × A PROP 共同企画。一晩中、心地よい冷感が続き、溜まった熱と疲れを静かにリフレッシュする寝具シリーズ。
A PROPサイト内のTEIJIN商品で使える15%OFFクーポンをご用意しました。
※TEIJIN商品が対象となります。
※お一人さま1回のみとなります。ご利用の際は、必ず購入画面をご確認ください。
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Profile

スリープトレーナー。「スポーツ×睡眠」をコンセプトにした、日本で唯一のアスリート専門の睡眠のパーソナルトレーナー。大学卒業後、大手インテリア会社で家具・寝具の販売に従事したのち現職。プロ野球選手、サッカー元日本代表選手、東京・パリ五輪メダリスト、競輪選手などをサポートするほか、企業向けセミナー、商品監修も手がける。TVや雑誌などのメディアにも多数出演。著書に『スリトレ すぐに試せるぐっすり睡眠法』(虹有社)、『世界のエリートが実践! 人生を変える睡眠術』(大和出版)。


帝人アクシア株式会社で枕、ケット、マットレスなどの寝具およびクッション、ラグといったインテリア製品の商品企画開発・営業を担当。





トレーニング、食事、そして睡眠。この3つがそろって初めて体は変わる、といわれるようになりました。この中でも「睡眠」に大きな関心が集まっています。けれど「何時間寝るか」の先にある「どう寝るか」を、私たちはどれだけ知っているでしょうか。しかも、筋肉量が多い人ほど夏の睡眠は難しくなるといいます。「エニタイムフィットネス」を国内展開する株式会社Fast Fitness Japanが運営する公式オンラインストア「A PROP」とTEIJIN AXIA(帝人アクシア)の共同企画による冷感寝具「DEEP COOL」の発売を機に、アスリート専門のスリープトレーナー・ヒラノマリさんと、商品企画開発を担当した帝人アクシア株式会社の田中智幸さんに、眠りと寝具の関係をお聞きしました。