日本茶は自分と向き合う時間をくれる

文・井上英樹(monkeyworks)写真・相馬ミナ
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2020.09.01

日本に住んでいる人にとって身近な飲み物「日本茶」。そのお茶を飲むことは、「心と体の健康につながる」とブレケル・オスカルさんはいいます。日本茶インストラクターとして、国内外でお茶の魅力を伝えるブレケルさんにお茶の魅力を教えてもらいました。

日本茶は体にいいというイメージをお持ちの方が多いでしょう。お茶が健康をサポートするというデータが飲料会社から出てくるようになり、欧米でも日本茶の注目が集まってきました。そして、欧米での人気が高まり、緑茶を飲む習慣のなかった人まで飲むようになったんです。

昔から「お茶を飲むと風邪を引かない」といわれます。たしかに、お茶には抗ウイルス効果があるカテキン(ポリフェノールの一種でお茶の苦味成分。抗酸化作用、コレステロールを下げる作用などがあるといわれる)が含まれています。その点では、健康効果があるとは思いますが、お茶の好きな私でも全てがお茶のおかげとも思えません(笑)。

妄信的にお茶を飲むだけでなく、適度な運動や良質の食事を心がけなければ健康は手に入らない。ただ、お茶を飲むことを習慣化すれば、副作用として健康になるということもあるかもしれませんね。お茶がいいのは“習慣”にしやすいことです。健康のために毎日何杯飲まなくてはいけないとか、そういう面倒くささがない。

私は健康面の効能より、お茶は人生を豊かにすると思うのです。茶葉を選び、湯を沸かし、急須でお茶をいれ、ゆっくりと味わう。人生にはそんな時間が必要です。 私は日本国内、欧米で日本茶の普及活動をしています。コロナ前は1年の多くの時間を旅先で過ごしていました。そんな生活を続けていると、知らずしらずのうちに疲れが溜まります。特に時差ボケがきつかった。慢性的に疲れが取れない。ですので、日常的にジムでランニングをしたり、筋力トレーニングに励んでいます。

その上で、お茶を飲む習慣があったことがよかった。お茶を飲む時間があるからこそ、ゆっくりと自分と向き合うことができた。もし、この習慣がなければ自分を見失っていたかもしれませんね。

これからの時代をどう生きるか

世界がコロナを体験しています。もはやバブル期や高度経済成長期のように、バリバリ会社で働く時代は来ないでしょう。今後は「自分の時間」を上手に管理して、「どうやったら幸せになれるか」など、人生の価値観を考える時代になっていくでしょう。安価な大量生産の商品やファストフードも便利でいいのですが、「働く、食べる、寝る」だけではなく、その人なりの豊かな生活が大切になるのではないでしょうか。

ステイホーム中は、娯楽が少なくなりました。いろんなことができなくなった。その時にお茶を楽しむ時間があってよかった。先程述べたように、日本茶を広める仕事を欧米でやっていたので忙しく、自分と向き合う時間が足りなかったんですね。これを機に「私にとっての健康はなにか」をゆっくり考えることができました。

日本茶のいいところ

日本茶のいいところはたくさんありますが、一番はいれ方によって味が大きく変わることです。こんなに幅広く楽しめる飲み物も少ないのではないでしょうか。たとえば緑茶を水出しにすると、旨味と甘味を中心に引き出せます。飲めば平和な気分になりますね。逆にお茶の葉を少なめにして、熱めのお湯でいれると「頑張るぞ!」という気分になる。朝飲むのにいいですね。濃厚な旨味のお茶は夕方に向いているし、夏は氷をいれてさっぱりとした冷茶もいい。

日本茶はいれ方次第で楽しみ方が広がります。私は約10年前にスウェーデンから日本にやってきました。その時はワクワクしていたんですよ。日本にはたくさんお茶が飲める場所があるんだろうって。だって、欧州にはコーヒーや紅茶を飲める場所はいくらでもありますからね。ですが、やって来てびっくりしました。喫茶店はたくさんあるけれど、日本茶が飲めるカフェがほとんどありませんでした。お茶を売るお店も減っています。ですが、最近になって若い人も日本茶への興味が高まっているように感じます。それに、日本茶が飲める「日本茶カフェ」も増えてきました。家でお茶を楽しむのもいいですが、専門店に足を運びさまざまなタイプの日本茶を試してみるのもいいと思います。きっと、日本茶の魅力を改めて感じることができると思います。それと、機会があれば私のイベントにお越しくださいね(笑)。

取材協力: IPPUKU & MATCHA

PROFILE

ブレケル・オスカル Oscar Brekell
1985年スウェーデン生まれ。高校時代に日本茶に魅了され、スウェーデン人で初めての日本茶専門家を志して来日。2014年日本茶インストラクターの資格を取得。2018年に起業し、シングルオリジンの茶葉の販売の他に講演や日本茶セミナーなどを開催し、テレビやラジオなどにも出演している。著書に『僕が恋した日本茶のこと 青い目の日本茶伝道師、オスカル』(駒草出版)、『ゼロから分かる!日本茶の楽しみ方』(世界文化社)など。 https://www.brekell.com/


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