大好きな人にバラを贈ろう

文・井上英樹(monkeyworks)イラスト・ねもとなおこ
Special
2020.12.21

人を惹きつける薔薇の魅力

時折、街で花束を持った人を見かけます。そんな花束を持つ人に対して、いろいろと想いを巡らせることはないでしょうか。「プロポーズするのかな?」「それとももらったのかな?」。通りすがりに見る花束でさえ、人の気持ちを惹きつけます。今回は薔薇の専門店『AFRIKA ROSE』を営む、萩生田愛(はぎうだ めぐみ)さんに、薔薇の花の魅力、そして花の贈り方をうかがいました。

美しく咲き誇るアフリカの薔薇との出会い

●『AFRIKA ROSE』ではアフリカ・ケニア産の美しい薔薇を販売している。そもそも、日本に住む人にとって「アフリカの薔薇」はあまり馴染みがない。まずは、萩生田さんにアフリカの薔薇との出会いと、その特徴について聞きました。

東京の広尾と六本木ヒルズでケニア産の薔薇を販売しています。『AFRIKA ROSE』を立ち上げたきっかけはケニアでの体験です。アメリカの大学に通っていたとき、アフリカの貧困について学んだのです。卒業後に入った会社がアフリカの支援事業を始めることになり、そこでアフリカへの気持ちが再燃。会社を辞めてケニアでボランティア活動をすることにしました。

当初、学校作りのボランティアに参加していましたが、学校があっても親に仕事がなければ、子どもたちは働かなくてはいけない。そこで、私はケニアに仕事を増やせないかと考えました。そんなときにケニアのショッピングモールで薔薇に出会ったんです。美しく咲き誇るバラの輝きは際立っていて、力強いエネルギーに心を奪われました。

ケニアの薔薇は最高峰の品質

薔薇に親しみのある人は、まずケニアの薔薇を見ると驚きます。色も豊富で、繊細なグラデーションを有していて、とても美しいのです。そして、日本産のものと比べて茎が太く、輪(りん)が大きい。通常の薔薇の1.5倍から2倍ほどの大きさがあります。

歴史的にアフリカに近い欧州では、ケニア産の薔薇は最高級の品質であると知られていました。なぜ、ケニアの薔薇は品質が高いのか。それは、ケニアは赤道直下にあるため、日照時間が長く、太陽のエネルギーをたっぷり浴びているから。そして、標高が高いため、夜間と昼間の寒暖差が激しい。この環境は、薔薇を育てるための最高の条件だったのです。

調べてみると、当時日本ではほとんどケニア産の薔薇が売られていなかった。この薔薇が日本に広がれば、ケニアにもっと雇用を生むことができると考えました。そうすれば、子どもたちが働かず、学校に行くことができる。それが、アフリカの薔薇を輸入して、販売する理由です。通常、アフリカはAFRICAと表記しますが、『AFRIKA ROSE』ではCがKになっている。KENYAのKなんです。

相手のことを想像して薔薇を選ぶ

●欧米では男性が花を贈ることは、日常的だと聞きます。しかし、日本だと特に男性が花を贈ることは、少々照れくさいという風潮があります。それに、男性ひとりで花屋に入るのも少し入りづらい気も。入ったとしても花をどうやって選んだらいいのか分からない。なんだか問題が山積ですね。

たしかに、日本の男性には「花に対する照れ」がある男性が多い気がします。「どうやって花を選んだらいいのか分からない」という声もよく聞きます。お店に入ってきたお客様に「お任せで」と、恥ずかしそうに言われることも多い。ですが、『AFRIKA ROSE』では、時間のあるお客様でしたら、「一緒に選びましょう」と提案しています。花を贈る相手を想い、選んでいただきたいのです。

まず、薔薇を贈る相手がどんな方なのかを尋ねます。すると、多くの方が「どんな方って言われてもな……」と困ってしまいます。ですが、時間をかけてお話を聞いていくと「……かわいくて、明るいかな」と、特徴を教えてくれます。私たちはその特徴に合った薔薇を提案します。

「奥様のかわいさや明るさは、薔薇でいうと何色ですか?」と伺うと、「かわいらしさは黄色で、明るさはピンクかな」と目の前に並ぶ薔薇を指差し選んでいただけます。組んだ花束をお見せして、奥様のイメージに合いますかと尋ねると、「うーん、少し違うな。白を入れてみるかな」と、お客様が自発的に選びはじめます。最初はお任せでと言っていたんですけどね(笑)。

大切なのは花を贈りたいという気持ち

「どれくらいの数をあげるものなのですか?」「一般的にはどんな色を買いますか?」と、お尋ねになる方がいます。花を買い慣れていないと、何を買えばいいのかも分からないし、何色がいいのかも分からない。しかし、花選びは自由ですし、そこに正解や不正解はないんです。まずはご自身の、「花を贈りたい」という気持ちを大切にしていただきたいですね。

ですが、色や数が意味を持つ場合があります。たとえば、12本の花束を「ダズンローズ(1ダースの薔薇)」と呼ぶのですが、薔薇の色にも意味(感謝・誠実・幸福・信頼・希望・愛情・情熱・真実・尊敬・栄光・努力・永遠)があります。プロポーズなど、状況によってはダズンローズを提案する場合もありますね。

また、赤い薔薇の花言葉は「愛情」や「情熱」です。独身の友だちに贈ると勘違いされてしまうこともあるので、少々注意が必要です。お礼などで贈るときは、ピンクやオレンジなどにすると、安心して受け取れる方が多いと思います。

すべての人を幸せにする花束

プロポーズに関しては、お任せではなく、是非一本一本自分で選んでいただいています。ご希望であればラッピングもご自身でしていただきます。人生の節目ですし、花束を自分で作ったという経験は大事だと思うんです。お渡しするとき、「この花束、俺が作ったんだよ」と言うと、受け取る側もすごくうれしいものです。「これはケニアの薔薇で、現地の雇用も生んでいる」とお伝えいただけたら、優しい人なんだなと思ってもらえるかもしれません(笑)。

●薔薇の花を贈るのは楽しそう。しかし、花束を持って歩くのは少々気恥ずかしい……。そう思ってしまう人もいるのではないでしょうか。萩生田さんは、その恥ずかしさを乗り越え、ぜひ堂々と持ち歩いて帰ってほしいと言います。その行為には大きな意味があるそうです。

花束が出来上がると、男性のほとんどは、「花束を持ち歩くのは恥ずかしい」と言います。しかし、袋に入れずそのまま持って帰っていただきたいのです。花束を持っている男性って、とても素敵なんですよ。私の実感ですが三割増しで格好良く見えますね(笑)。

花束を持って歩くと、すれ違う女性はあなたを見ることでしょう。そして「あの花束を渡される人は幸せだな」と思います。つまり、道行くすべての人を幸せにしているんです。……そんな話をすると、恥ずかしい気持ちが誇らしい気持ちに変わる。皆さん、花束を持って颯爽とお店を後にします。花束は、渡す人だけではなく、見ず知らずのたくさんの人を幸せにしているのです。

これまで、男性のことを中心にお話ししましたが、『AFRIKA ROSE』のお客様の男女比は4:6。女性の方が少し多いくらいです。女性の場合は、自分のために薔薇を買う方が多いですね。たとえば、一輪の薔薇を毎週買って行かれる人。ギフトやご自宅用にまとめて買う方もいらっしゃいます。女子会の手みやげ、お祝いやお礼、両親の結婚記念日・米寿のお祝いなど、さまざまなシチュエーションで薔薇を買って行かれます。

手間をかけた分だけ、
薔薇は美しく、あなたに咲いてくれる

薔薇は夏場の暑さに弱いので、一般的には花持ちは3日程度。しかし、『AFRIKA ROSE』の薔薇は生命力があります。環境によりますが、夏場でも3日~1週間。冬場ですと毎日お手入れをしていただくと1ヶ月以上楽しんでいただける方もいます。

できれば毎日花瓶のお水を替えて、「水切り(水上げ)」をしてください。水切りとは、バクテリアの発生を抑えるため、茎の最下部を斜めに切ることです。斜めに切ると断面積が広くなるため、水を多く吸うことができます。バクテリアが発生すると、茎が詰まってしまいます。人間で例えると、鼻づまりで空気が吸えない状態になってしまうんです。

切り花といえども、少々手間はかかります。『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)に「きみのバラが、きみにとってかけがえのないものになったのは、きみがバラのために費やした時間のためなんだ」という一節があります。手間をかけた分、その薔薇はあなたに美しく咲いてくれるのです。

贈られ慣れていない人は、
突然の花束に驚くことも

●萩生田さんに話を聞いて、花を贈るという行為には、多様な喜びがあることが分かりました。花屋に行く、花を選ぶ、ラッピングする、花を持ち帰る。そして花を贈る。花をもらった人は、家に持ち帰り世話をする……。最初に花を買った人から、花というバトンが渡され、楽しみと喜びがリレーされています。

薔薇を贈られた人は、見るたび、もらった時のうれしい感情、ドキドキした気持ち、その人との会話を思い出します。

また、花を贈られ慣れている人は素直に「ありがとう」が言えるのですが、慣れていなければ、うれしいけれど、どう喜びを表現したらいいのか戸惑ってしまう場合があります。笑顔を期待している贈る側も、喜んでもらえないとショックを受けてしまい、「二度と花なんて贈らない」となってしまう。もらう側も、恥ずかしいかもしれないけれど、ぜひ「ありがとう」という気持ちを伝えてくださいね。そうすれば、またお花を贈ってもらえるでしょう。

気持ちを伝えるために花を贈る

薔薇を贈ることは素敵なことだと思います。しかし、一番大事なことは、大切な人に愛情や感謝を伝えることです。それには言葉が必要です。大切な人に対し、日頃の感謝を伝えられていないことって多い。「いつか言えばいいや」と思っていても、そのいつかが来ないかもしれない。

気持ちを伝える時、主役は薔薇ではありません。感謝や愛を伝える人の気持ちが主役なんです。思い切って想いを伝えてみてください。そして、そこにケニアの薔薇を添えてもらえたら、私たちはこの上なく幸せです。ぜひ、感謝や愛を伝えるため、薔薇の花を大切な人に贈ってみてください。

PROFILE

萩生田 愛(Megumi Hagiuda)
AFRIKA ROSE 代表取締役。1981年、東京生まれ。米国大学卒業後、大手製薬会社勤務を経て、2011年アフリカ・ケニアに渡る。アフリカの豊かな自然や人々の営み、生命力溢れる薔薇に魅了され、2012年「アフリカの花屋」を立ち上げる。2015年、アフリカ薔薇専門店「AFRIKA ROSE」を東京広尾にオープン。2019年、六本木ヒルズ内に「AFRIKA ROSE & FLOWERS」をオープン。著書に『アフリカローズ 幸せになる奇蹟のバラ』(ポプラ社)がある。
AFRIKA ROSE(アフリカローズ)https://afrikarose.com/


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