TopicsVol.17

観葉植物との付き合い方
初心者でも楽しめる、おすすめの種類をご紹介

2021.12.10

植物が部屋にあると不思議と心が和みます。既に育てている人も多いのではないでしょうか。しかし、一方で「毎日水やりが面倒くさい」、「枯らしてしまう」、「虫がイヤ」という声も聞こえてきます。たしかに、枯らしてしまうとかわいそうですよね。どうすれば、うまく植物と付き合い「植物のある暮らし」ができるのでしょうか。関東最大級のフラワーショップ『オザキフラワーパーク』の百瀬謙太郎さんに、観葉植物との付き合い方を伺いました。

気に入った植物を育ててみよう

部屋に植物があると、さまざまな気付きがあります。水を与えると葉に張りが出てきますし、新しい芽を出せば季節の移ろいに気付きます。思いがけず、小さな花を咲かせていることに気が付いたとき、普段の無機質な生活に変化が現れるような気にさえなります。私は植物の力を感じることで人間も新たな活力を得ることができると思います。

では、どのような植物からスタートすればよいでしょうか。基本的には自分が気に入ったものをチョイスするのが一番だと思います。というのも、興味のない植物を手に入れたとしても、世話が疎かになってしまったり、積極的に育て方を調べたりしないでしょう。結果として、うまく育たない要素が増えてしまいます。

植物の育て方の3つのポイント

どのように植物を育てればいいのでしょうか。植物全般における世話のポイントは「明るさ」、「置き場所」、「水やり」が重要だと考えています。

まず「明るさ」ですが、植物は光合成で養分を得ていますので光は最重要です。暗所に置いておくと、水や肥料をしっかりやっていても枯れてしまいます。植物ごとに明るさの好みはありますが、「直射日光の当たらないレースのカーテン越しくらい」の明るさが理想的です。

次に「置き場所」です。夏は暑すぎない場所で、冬もまた寒すぎない場所を探してください。日の光に当てすぎると、葉が火傷のような状態になってしまうことがあります。さらに風通しが良い場所が理想的です。また、置き場所を頻繁に変えないことも重要です(寒い冬場は一時的に室内や温室などに移動させることはあります)。

「水やり」は、基本的に表面の土が乾いたら水を与える程度で大丈夫です。水を与えすぎると根腐れといって、根が腐ってしまうのです。ただし、乾かしすぎるとダメです。特に植物購入後は少し注意が必要です。植物にとっては大きく環境が変わりますので、購入後一週間くらいは植物の様子をこまめに見てあげましょう。

育て方は人それぞれだと思います。「水をきちんとあげたい人」、「それほど手をかけられない人」、「水やりを忘れてしまう人」。さまざまなスタイルがありますが、私は植物を育てる初心者の方には水やりを頻繁にしなくても良い「多肉植物」をおすすめすることもあります。

多肉植物は乾燥地帯に育成しているものが多く、葉、茎、根の内部などに水を貯蔵することができるので、水をたくさんあげすぎると根腐れをすることがあります。ですので、水やりを忘れてしまっても大丈夫なくらいの気持ちで付き合ってもらいたいですね。

私のおすすめは、「サンセベリア」、「ソフォラ」、「ガジュマル」の3種類です。それぞれタイプは違いますが、これらは比較的育てやすいと思います。

■サンセベリア

サンセベリア

「サンセベリア」はとても有名です。「トラノオ」と呼ぶ人もいます。20年ほど前、空気の清浄効果があるとテレビ番組で紹介されて以来、部屋の空気をきれいにしたいという目的で、ブレイクしました。「サンセベリア」の名前を知らなくても、見たことのある方は多いのではないでしょうか(以前は縦に伸びるタイプのサンセベリアが人気でした)。どの植物も多少の「空気清浄効果」はあるとは思いますが、とりわけサンセベリアは空気清浄効果が高いと言われています。

縦に伸びるタイプのサンセベリア

■ソフォラ

ソフォラ

次にご紹介するのが「ソフォラ」です。小さな木のような植物で、爆発的に大きくなることもありません。「少し伸びたな……」と思えば、高さを抑えるイメージで、ハサミで少し詰める程度の管理で大丈夫です。反対に大きくしたければ切らなければいい。そのあたりのコントロールが簡単にできます。

そもそもニュージーランド原産の植物で、寒暖の差が激しく、厳しい環境下で育つので生命力が強いんです。枝や葉の繊細なところを楽しみたい人にいいでしょう。花を咲かせることもあります。比較的管理はしやすい植物ですが、明るいところと、お水が好きですので、「ソフォラ」には、きっちり水やりをしてほしいですね。

■ガジュマル

ガジュマル

3つ目「ガジュマル」は沖縄など、暖かい地域に行くと在来種として見ることができます。日本人に馴染みがあるため、古くから観葉植物として人気です。気根というモコモコしているところを見て楽しむ方が多いようです。タイのお寺に行くとガジュマルが石仏を飲み込んでいる様子も見ることができ、見かけ通りとてもたくましい植物です。

以上の3つは「明るい場所に置く」、「表面の土が乾いたら水をあげる」、「風通しの良い所に置く」という育て方をすればOK。とてもベーシックな育て方です。どうですか、思ったより簡単ではないでしょうか。

植物と自分の関係性をつくる

しかし、「育てられるかな」というお気持ちも分かります。だって、家の中に土を持ち込むわけですし、虫が来るのではないか、水をあげなければいけない…と、いろいろプレッシャーになるかもしれません。実は植物は最初のハードルが意外と高いんです。しかし、何も置いていない場所に、植物を置いてみると部屋の印象ががらりと変わります。新型コロナの時代になってテレワークが多くなったのでしょう、「部屋が寂しいから植物を置きたい…」そんなお客さまが最近増えています。

部屋に植物を置くと、自分と植物との関係性ができます。そうすると、その植物に対して「何かをする」という意識が生まれます。「何ができるだろうか?」って考えるようになるんです。水をやりながら植物を観察してみると、わずかな変化が分かるようになります。繰り返しの日々ですが、植物はその単調な生活の中にアクセントをくれる。私はそんな風に感じますね。

植物によって変化もさまざまです。「ガジュマル」はそれほど大きく変化はしませんが、「ソフォラ」は梢が伸び、古い葉が落ち、春になると旺盛に芽吹きます。劇的に変化が分かるんです。身近なところに自然との接点があれば、ご自身の活力に繋がるかもしれませんね。もし、家に小さなガジュマルがあったとして、旅行で沖縄を訪れたときに大きな「ガジュマル」を見たとしたら。「おまえ、あのガジュマルか!」と、本来のたくましさに感動することでしょう(笑)。これまでとは違う角度で興味が生まれるはずです。

植物の育て方にマニュアルはない

先ほど、3つのポイントを挙げましたが、実を言うと植物育成には画一的なマニュアルはありません。と言いますのも、環境によって植物の育ち方は全て違うからです。置き場所と品種にもよるので、育て方は無限にある。

もし、育て方に疑問があれば、植物を求めたお店で聞くといいです。どのお店でも答えてくれると思います。その際、植物の状態だけではなく、実際に育てる環境が分かるといいですね。スマホで写真を撮り、それを見せるとより良いアドバイスがもらえると思います。植物の育て方は本にもウェブにも情報がたくさんあります。ウェブで育て方を見る際は、ご自身の環境に近い人を参考にするといいです。

植物は好きでも虫が苦手だという人は多いようです。たしかに、大自然の一角を持ってきているようなものですから、虫が全く出ないとは言い切れません。ただ、私の経験上、畑や林などの虫の発生源が近くになければ、発生率は少し下がります。予防的に園芸用薬剤に頼るのも非常に効果的です。だけど、どうしても苦手という人は「チランジア」というエアプランツがおすすめです。エアプランツは北アメリカの南部からメキシコの乾燥地帯に自生している植物で、そのほとんどが樹木や岩場に着生しています。育成に土が必要ありませんので、土に付く類いの不快害虫に関してのリスクは低減できます。その意味で虫嫌いの人にはおすすめです。

植物には相性があるけれど……

「うまく育てる」。これを最初からゴールにしている人がいらっしゃいます。しかし、大きな声では言えませんが、私も枯らしてしまうことはあります。植物の育て方に100点はないんです。それに人と植物との相性も大きい。「水をやるのが好きな人が水を必要とする植物」、「水をあげるのを忘れがちな人が水をあまり必要としない植物」と、合致すると最高です。相性が合えば10年以上、いやそれ以上、付き合うことができるはずです。

だけど、1度枯らしてしまったからといって、その植物と合わないというわけでもないんです。先ほどお伝えしたようにいろんな環境がありますからね。「うまく育てる」にとらわれすぎず、気になったものをいろいろと試していただければと思います。今日、お話しした植物以外にもいろんなジャンルがあるので、きっとどれかには当てはまると思います。ぜひ、植物を育ててみてください。

取材協力:オザキフラワーパーク
住所:東京都練馬区石神井台4丁目6−32
電話:03-3929-0544

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