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あなたは食べたものでできている

第2回

いい油と悪い油
—サバ缶でつくる煉獄の卵—

「健やかなカラダとココロをつくるには、日々の食事マネジメントが欠かせません」。そう語るのは、米国政府認定ホリスティックヘルスコーチの資格を取得し、食事や運動、マインドフルネスの領域で幅広く活躍するMonamiさんです。「食事と健康」をテーマにしたこの連載では、NY発の新しい栄養学の知識を交えながら、みなさんが今すぐ実践できる食事術をたくさんご紹介していきます。
今回のレシピ【サバ缶でつくる煉獄の卵】はこちらから!

脂質といえば、「カラダに悪いもの」「太る」と決め込んで、普段の食事から徹底的に取り除こうと頑張っている方はいませんか?もしかしたら、それ、脂質に関する知識が古くなってしまっているからかもしれません。

1980年代から1990年代にかけて、健康のためには総脂質摂取量を減らすべきだと考えられていました。何でもかんでも低脂肪や無脂肪さえ選んでおけばいい、というダイエット法が大ブームとなり、大手ハンバーガーチェーンでさえも「脂質91%カット」をうたったハンバーガーを発売していたほどです。

それから30余年。脂質の研究が進み、摂取量そのものよりも、脂質の質とバランスが重要であることが分かってきました。今回は、健康にいい油と悪い油の見極め方について詳しくご紹介していきますので、「脂質はすべて敵」というイメージをみなさん一緒にアップデートしていきましょう。

脂質の役割

第1回「栄養バランスって、なに?」でお話ししたように、脂質は炭水化物、タンパク質と並ぶ3大栄養素のひとつで、わたしたちのカラダにとって不可欠です。ダイエットやカラダ作りに励む人たちの間で「余計な脂肪がつきそう」と悪者にされがちな脂質ですが、体内で以下のような重要な役割を担っていることを、まずは覚えておきましょう。

・身体活動のエネルギー源
・細胞膜やホルモンの材料
・脂溶性ビタミンの吸収促進
・体温の保持や内臓の保護
・脳の発達サポート

もちろん、脂質は過剰に摂取すると体脂肪として蓄積されるので肥満の原因になりかねません。しかし、過度な不足もまた、体力の低下や肌荒れなど、カラダに様々な悪影響を及ぼしてしまうので気をつけましょう。

脂肪酸の種類

脂質を多く含む食品と言えば、みなさん何を思い浮かべますか?

バターをたっぷり塗ったトーストや背脂チャッチャ系ラーメン、サシの入ったステーキ、オリーブオイルドレッシングを回しかけたサラダ、サクサクに揚がった天ぷらにあぶらが乗った魚の塩焼き…。本当に、色々ありますよね。

実は、脂質と一括りに言っても様々な種類があって、原料や性質が違えば、カラダへの影響も異なります。ですから健康のためには、量さえ摂ればいいのではなく、カラダにいい働きをする脂質を賢く選び、バランスを考えながら摂ることが大切です。

脂質は、大きく分けて常温で液体の「油」と常温で固体の「脂」の2つに分けられます。食卓上のオリーブオイルとバターの性状の違いを想像してもらうと、分かりやすいかもしれません。

こうした違いを生み出しているのは、「脂肪酸」と呼ばれる脂質の主成分です。脂肪酸には大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があります。食品には通常これらが混ざって含まれていますが、ざっくりと言えば、オリーブオイルや菜種油、ごま油などの植物性油脂には不飽和脂肪酸が多く、肉の脂やバターなどの動物性油脂には飽和脂肪酸が多く含まれます。

少しややこしいのですが、例外として、魚の油は動物性ですが、不飽和脂肪酸に該当します。一方、ココナッツオイルやパーム油は植物性油脂ですが、飽和脂肪酸を多く含みます。

ポイントをまとめると、次のようになります。油選びの基本として、ぜひ押さえておきましょう。

常温で液体の油 = 不飽和脂肪酸: 主に植物性油脂 (例外 魚油)
常温で固体の脂 = 飽和脂肪酸: 動物性油脂 (例外 ココナッツオイル、パーム油)

不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の健康へのメリットデメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。

摂りたい油 不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸は、血中コレステロール値を改善したり、炎症反応を抑制したり、心臓の機能を整えるなど、カラダにとって有益な働きをするものが多く、バランスを意識しながら積極的に摂取したい油です。

みなさん、「オメガ〇系オイル」という言葉を見聞きしたことがあるでしょう。魚油やアマニ油など「オメガ3系」が有名ですが、他にも「オメガ6系」と「オメガ9系」があります。これらは不飽和脂肪酸の種類です。

<オメガ3系>
オメガ3系脂肪酸は、α-リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)の総称で、アマニ油やエゴマ油のような一部の植物油、魚、くるみに多く含まれます。

血中のLDLコレステロールと中性脂肪を減少させ、HDLコレステロール (いわゆる善玉コレステロール)を増加させます。血栓をできにくくしたり動脈硬化の発生を抑制するような、「血液サラサラ」効果が注目を集めています。

その他オメガ3系脂肪酸には、抗炎症作用や脳の神経細胞を活性化し情報伝達をスムーズにする働きがあるとして、認知症やうつ病の予防効果も期待されています。

<オメガ6系>
リノール酸に代表されるのがオメガ6系脂肪酸。オメガ3系と同じく「必須脂肪酸」ですが、少し注意が必要です。揚げ物や炒め物、菓子類に使用されるほとんどの植物油の主成分なので、普段の食事で不足することはまずありません。逆に、知らず知らずのうちに摂り過ぎてしまうことに気を付けましょう。

<オメガ9系>
オメガ9系はオレイン酸に代表される脂肪酸で、血中のLDLコレステロール (いわゆる悪玉コレステロール)を下げ、生活習慣病を予防する効果があることが分かっています。健康オイルの先駆けとなったオリーブオイルに豊富に含まれます。

オメガ3系・6系と比べると酸化しにくく、加熱調理に向いているので、摂り過ぎてしまいがちなオメガ6系オイルの代用として取り入れるのがオススメです。

ギリシャやイタリアなどの地中海沿岸諸国の人たちは、脂質摂取量が多いにも関わらず、心臓病、肥満、がんの罹患率が低いことで知られています。大規模な研究を通じて、その秘密は野菜に加え、魚、オリーブオイル、ナッツ類を中心とした食事にあることが分かっています参考1

良質な不飽和脂肪酸 —中でもオメガ3系脂肪酸やオメガ9系脂肪酸— をバランスよく取り入れた「地中海食」は、栄養価に優れ、健康的な食事モデルとしての地位を確立しています。食生活が欧米化するにつれ魚離れが進み、特にオメガ3系脂肪酸の摂取量が減少してしまった現代の日本人にとって、とても良い参考になりますね。

気を付けたい油 飽和脂肪酸

ここまで、カラダにプラスになる油についてお話ししてきましたが、ここからは、カラダにマイナスになる油についてお話ししていこうと思います。

飽和脂肪酸は、前述の通り常温で固体なのが特徴で、バターやラード、肉、乳製品など、主に動物性食品に多く含まれます。飽和脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロールを増やし、肥満や心血管疾患リスクを高めてしまいます。

バターをコーヒーに混ぜて飲むというアメリカ発のダイエット法が、一時日本で話題になったのはまだ記憶に新しいでしょう。残念ながら、飽和脂肪酸の筆頭であるバターが健康を増進するという科学的根拠は今のところありません。

飽和脂肪酸は悪者ではない、という議論も度々起きていますが、ハーバード公衆衛生大学院の専門家らは、そのような分析は「深刻な誤解を招く」と警鐘を鳴らしています参考2.3。同時に、飽和脂肪酸を良質な油、つまり不飽和脂肪酸で置き換えることが健康にいい、というメッセージを発信し続けています。

日本政府もまた、飽和脂肪酸の摂り過ぎに注意するよう呼びかけています。厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、総エネルギー量に占める総脂質からの摂取エネルギーの目標を18歳以上の男女で20〜30%としていますが、同省の「令和元年 国民健康・栄養調査報告」によれば、20歳以上の男女の3割以上で、その比率が上限を超えていました。

また、食事摂取基準では脂質の中でも特に飽和脂肪酸摂取量を総エネルギー摂取量の7%以下に抑えるよう推奨していますが、同調査は20歳以上の男女の平均値がそれを上回っていることを示しています参考4.5.6

飽和脂肪酸の摂取過剰による悪影響は、植物由来でありながら飽和脂肪酸を多く含むココナッツオイルやパーム油にも当てはまります。さまざまな健康効果がうたわれ「スーパーフード」としてすっかりお馴染みになったココナッツオイルですが、やはり摂り過ぎは禁物だということです。

避けたい油 トランス脂肪酸

これまで摂りたい油として不飽和脂肪酸と、気を付けたい油として飽和脂肪酸について解説してきました。次にご紹介するのは、トランス脂肪酸。色々な油の中でも、特に注意して避けたい油です。

食品中のトランス脂肪酸には、牛などの反芻動物の体脂肪や乳脂肪など天然由来のものと、常温で液体の植物油に水素を添加して固体状に変えたり、脱臭のために高温処理したりする過程で生成される人工的なものがあります。

後者のトランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどの加工油脂に多く含まれます。食品にフワフワやサクサクとした食感を与え、しかも長持ちさせてくれるので、クッキーやケーキなどの洋菓子や、揚げ物などによく用いられます。

トランス脂肪酸は、善玉コレステロールを減少させ、逆に悪玉コレステロールを増加させます。心臓病や糖尿病のリスクを高めるなど、健康に対する数々のデメリットが報告されています。

世界保健機関(WHO)は、毎年およそ50万人がトランス脂肪酸が原因の心疾患で亡くなっていると推定しています。WHOは、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1% 未満に留めるよう提言し、2023年までに世界の食糧供給から工業的に生産されたトランス脂肪酸を排除することを目標としています参考7

諸外国で、トランス脂肪酸の使用禁止や表示の義務化が進む一方、日本政府は、トランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギー量の1%相当より少なくすること、さらに1%以下の場合でも可能な限り低く留めることが望ましい、としています参考8

日本人は、欧米人と比較してトランス脂肪酸の摂取量がそもそも少ないため過度な心配は要らないといわれるものの、ファストフードやインスタント食品、市販のパンやスナック菓子を好んで食べるという方は、要注意です。

「あぶら」と一口に言っても、カラダにとっていい働きをするものとカラダにとってよくない働きをするものがあり、その質は脂肪酸の種類で見極めることができると分かったところで、本日のレシピをご紹介します。

DHA・EPAたっぷりサバ缶レシピ

カラダにうれしい油の代表、オメガ3系脂肪酸の中でもDHAとEPAが豊富なサバを使って、イタリア家庭料理「煉獄の卵」をアレンジしてみました。イスラエルの「シュクシュカ」という料理としてもちまたで話題なので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

「魚は食べたいけど、調理が面倒」という方でも大丈夫。おうちで手軽に食べられるよう水煮缶のサバを使い、フライパンやスキレット一つで作れるシンプルなレシピになっています。調理油には、ぜひオメガ9系脂肪酸がたっぷりのオリーブオイルを使って、良質な脂質をチャージしてくださいね!

【今回のレシピ】

サバ缶でつくる煉獄の卵

材料

オリーブオイル……大さじ2
玉ねぎ……1/2個
ニンニク……1片
赤唐辛子……1本
サバの水煮缶……1缶 (190gのものを使用)
トマト缶 (ホールまたはカット)……1/2缶 (200g)
卵……2個
塩胡椒……少々
パセリ……適量

作り方

  1. フライパンにオリーブオイルを熱し、みじん切りのニンニク、輪切りの赤唐辛子、薄切りにした玉ねぎを弱火〜中火で炒める。
  2. 玉ねぎがしんなりしたら、サバを加える。身がバラバラにならない程度に軽くほぐす。
  3. トマト缶を潰しながら加えて数分煮込み、塩胡椒で味を調える。
  4. 卵を直接割り入れ、好みの固さの半熟卵になるまで弱火で煮る。
  5. 仕上げにみじん切りのパセリを散らす。

Monami
世界最大の栄養学専門学校 Institute for Integrative Nutrition(IIN™)にて米国政府認定ホリスティックヘルスコーチの資格を取得。食事や運動、マインドフルネスを通して、健康で幸せなライフスタイルづくりのサポートをしている。アメリカ、カナダ、フランス、モンゴル、香港での居住経験を生かした異国情緒あふれるヘルシー料理が得意で、レシピ監修やプライベートのフードデリバリーも行っている。趣味はトレイルランニング、ヨガ、ブラジリアン柔術。

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