FoodVol.3

連   載

You are what you eat
あなたは食べたものでできている

第3回

腸内環境を整える
—納豆ときのこのチゲ—

「健やかなカラダとココロをつくるには、日々の食事マネジメントが欠かせません」。そう語るのは、米国政府認定ホリスティックヘルスコーチの資格を取得し、食事や運動、マインドフルネスの領域で幅広く活躍するMonamiさんです。「食事と健康」をテーマにしたこの連載では、NY発の新しい栄養学の知識を交えながら、みなさんが今すぐ実践できる食事術をたくさんご紹介していきます。
今回のレシピ【納豆ときのこのチゲ】はこちらから!

食べる腸活とは?

みなさんは、日頃どのような「腸活」をしていますか?

「腸活」とは、一言で言えば、腸内環境を整えるということ。腸は食べ物を消化・吸収・排泄する器官というだけではありません。近年、全身の健康との関わりが急ピッチで解明されつつある細菌の棲みかでもあることから、腸のケアが注目されるようになりました。

食生活の改善は、ひとつの大きな「腸活」です。そこで今回は、細菌レベルで腸内環境を整える食事法についてご紹介したいと思います。
まだ始めていない、という方も、一緒に食べる「腸活」を始めましょう!

腸内フローラと健康

わたしたちの腸内には、およそ1000種類、40兆個、重さにしてなんと1〜2キロの細菌が生息しているといわれています。人間のカラダをつくる細胞は約37兆個なので、腸の中には自分の細胞よりも多い細菌がいることになります。

腸内細菌は、菌種ごとに群れをなす様相を花畑や叢(くさむら)に例えて「腸内フローラ」あるいは「腸内細菌叢」と呼ばれるようになりました。最近は、「マイクロバイオータ (microbiota)」という言葉も多く使われています。
まだまだ謎が多いものの、ゲノム解析技術の飛躍的な進歩により、近年、腸内細菌と健康の関係は日進月歩の研究領域となっています。
腸内フローラはコンディションが良好だと、病原菌を撃退したり、免疫機能を活性化させたり、発がんを抑制するなど、宿主である人間にたくさんの有益な作用をもたらしてくれます参考1

「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」の分泌にも関わっていることが示されています。どうやら、ココロの健康にも、腸内フローラが大きく影響しているようなんですね参考2

一方で、バランスが崩れると、炎症性腸疾患やメタボリック症候群、喘息など、さまざまなトラブルに関与することが示唆されています参考3

腸内フローラは多様性が重要

腸内フローラの細菌の種類や分布の仕⽅などは、十人十色だといわれています。

そもそも、人間は母親の胎内にいるときは、無菌状態。産道を通過する時に母親の細菌に触れるのに始まり、外の世界に生まれ出てから、菌を獲得していきます。腸内フローラの原型は幼児期までにつくられ、それ以降は、食習慣や生活習慣、年齢、抗生物質をはじめとする薬の服用などの影響を受けて変化します参考4

腸内細菌には、ビフィズス菌や乳酸菌など良い働きをする「善玉菌」、ウェルシュ菌や大腸菌など悪い働きをする「悪玉菌」と、状況に応じてそのどちらにもなり得る「日和見菌」の3種類があると聞いたことがあるかもしれません。

これまで、善玉菌を増やし悪玉菌を減らすことが良い、というのが通説でした。しかし、先述したように、腸内フローラは個人差が大きく、万人にとって理想的な構成が何かということは、実はまだ明らかになっていないのです参考3

近年は、善玉菌が多いかどうかということよりも、より多くの種類の細菌が腸内に棲みついている方が良い、という考え方が注目されています参考5

腸内細菌は、それぞれ異なる性質や役割を持っていて、個々人の腸内環境のタイプに応じて複雑に相互作用することで、健康をサポートします。日々著しく変化する環境に柔軟な対応ができるように、腸内フローラの多様性を高めて、総合力をアップさせるということが重要なわけです。

バランスのいい食事がカギ

腸内フローラの多様性を保つ最大の方法。それは、何といってもバランスの取れた食事をして、腸内細菌にさまざまなエサを供給することです。腸内細菌によって、好きなエサが違います。極端にいうと、バナナばかり食べていれば、バナナが好きな細菌しか育たず、それ以外の細菌は淘汰されてしまいます参考6

ですから、好き嫌いをせず偏りなく食べることは、カラダに必要な栄養素を摂るということだけでなく、腸内細菌の多様性を維持する観点からも、とても大切なのです。

それでは、具体的に何を意識して食べればいいのでしょうか。大きく二つ、ご紹介しましょう。

意識して摂りいれたい
プロバイオティクスとプレバイオティクス

プロバイオティクス
まず一つ目は、ビフィズス菌や乳酸菌など、腸内環境を改善することによってわたしたちの健康に役立つ生きた微生物そのものや、それを含む食べ物です。

これらは「プロバイオティクス」参考7 と呼ばれ、乳酸菌飲料やサプリメントとして市販されている製品以外にも、身近なところでは、ヨーグルト、納豆、味噌、漬物、酒粕などの発酵食品があります。最近はコンブチャやケフィア、テンペなどもスーパーでよく見かけるようになりましたね。

外から摂取する菌は、簡単には定着しないので、食べるとお腹の調子が良くなるな、と実感が得られるものを継続して摂取するのがおすすめです。我が家では、ヨーグルト、納豆、味噌はもちろん、ぬか漬けや甘酒を作って数種類の発酵食品を常備するようにしていますよ。

プレバイオティクス
そして二つ目は、善玉菌のエサとなり、その数を増やしてくれるオリゴ糖や食物繊維を摂ることです。「プロバイオティクス」に対して「プレバイオティクス」参考8と呼ばれています。

オリゴ糖は、玉ネギ、ニンニク、ネギ、ニラ、大豆などの豆類、ゴボウ、アスパラ、バナナといった食材に多く含まれます。食物繊維が豊富なものといえば、ゴボウ、ニンジン、オクラなどの野菜、果物、海藻類、きのこ類です。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」参考9では、1日に摂取したい食物繊維の目標量は、18〜64歳の男性が21g以上、女性が18g以上とされています。しかし、厚生労働省が行った「令和元年国民健康・栄養調査」参考10によると、男女1日の平均値は20 代で16g、30代で17g、40代で17.1gと、多くの年代で十分な量が摂れていないことが分かりました。

食物繊維不足が腸内細菌の栄養不足、ひいては腸内フローラのアンバランスにつながらぬよう、気を付けたいところです。

食べ物で腸内フローラは変わる

日頃から、プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を含むバランスのいい食事(詳しくは連載 第1回へ)を心がけることが「腸活」の第一歩であることがお分かりいただけたでしょうか。お腹の中の同居人を大切に育てて、仲良く共に健康な人生を歩んでいきましょう。

ということで今回は、早速、腸内細菌たちが喜んでくれそうな納豆、キムチ、そしてきのこや野菜をたっぷり使った韓国風チゲのレシピをご紹介します。

「ん…お鍋に納豆!?」とお思いの方も、一度食べたらクセになる組み合わせなので、だまされたと思って作ってみてください。味付けは、韓国のコチュジャンと日本の味噌をダブル使いすることで、コクが深まります。

まだまだ寒い日が続きます。温かいものをしっかりと食べ、腸内環境を整えて、元気に春の訪れを待ちましょう!

【今回のレシピ】

納豆ときのこのチゲ

材料

豚バラ肉 薄切り……150g
ひきわり納豆……1パック
きのこ……200g (舞茸、椎茸、エノキ、シメジなど数種類組み合わせるといい)
ニラ……1/2束
キムチ……150g
さつまいも……150g
コチュジャン……大さじ1
味噌……大さじ2
水……2カップ
糸唐辛子……適量

作り方

  1. 鍋を熱し、食べやすい大きさにカットした豚バラ肉とキムチ(半量)を弱火〜中火でよく炒める。(※豚バラ肉から脂が出るので、本レシピでは炒め油を使用していませんが、くっつきやすい鍋を使う場合は炒め油適量を入れてから炒めてください)
  2. きのこを加えてさらに炒める。
  3. 水を加え、厚さ1cm・長さ5cmの板状に切ったさつまいもを加えて煮る。
  4. さつまいもが軟らかくなったら、コチュジャンと味噌を溶き入れ、4〜5cmの長さにカットしたニラを上に重ねるように入れ、さっと火を通す。
  5. 火を消してから、残りのキムチ、よく混ぜたひきわり納豆を彩りのバランスがよくなるようにのせる。お好みで糸唐辛子をのせて完成。

Monami
世界最大の栄養学専門学校 Institute for Integrative Nutrition(IIN™)にて米国政府認定ホリスティックヘルスコーチの資格を取得。食事や運動、マインドフルネスを通して、健康で幸せなライフスタイルづくりのサポートをしている。アメリカ、カナダ、フランス、モンゴル、香港での居住経験を生かした異国情緒あふれるヘルシー料理が得意で、レシピ監修やプライベートのフードデリバリーも行っている。趣味はトレイルランニング、ヨガ、ブラジリアン柔術。

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これからのレシピもお楽しみに

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