SpecialVol.20

高校生が考える
地域の健康と未来

高校生が仲間とともに自分たちが暮らす地域の健康と課題について考える探求型ワークショップ「エニタイムスチューデントミーティング2023」が、エニタイムフィットネスを運営する株式会社Fast Fitness Japanの主催で開催された。全国から集まった高校生たちが春休みを利用して地域の課題を数週間にわたって調査し、解決策を考え、未来に向けたアイデアを出し合った。最終日の発表会の様子をレポートする。

双方向の関係性の構築

春とはいえまだ肌寒い4月最初の日曜日の早朝。東京渋谷の会場は高校生たちのエネルギーに満ちあふれていた。集まっているのは、高校生を対象とした「地域とフィットネスの未来」を考えるイベント、エニタイムスチューデントミーティング2023に参加している高校生たちだ。この日は、約3週間にわたってチームで検討してきたアイデアをプレゼンテーションする、イベントのクライマックス。北は北海道、南は福岡まで、全国から集まった高校生たちがそれぞれのチームに分かれて、プレゼンに向けて最後の打合せをしている。

主催する株式会社Fast Fitness Japanは、24時間年中無休・マシン特化型フィットネスジム「エニタイムフィットネス」を日本国内で展開している。エニタイムフィットネスは、保護者が会員であれば高校生は無料で利用できる制度「ハイスクールパス(高校生無料利用)」を実施して、これまでも高校生の心と体の健康をサポートしてきた。

冒頭、株式会社Fast Fitness Japanの土屋敦之代表取締役社長から「みんなで話し合って考えた時間は決して無駄にならない。この時間を楽しみましょう」と開会の挨拶があった。土屋社長は日本のフィットネス参加率を10%に上げることを目指してきた。そのなかで、「ハイスクールパス」で高校生に運動する場を提供したり、高校生向けキャリア教育イベント「日経エデュケーションチャレンジ」で運動がもたらす心と体への影響について講義をしたりと、高校生に向けて運動の大切さについて情報発信を続けてきた。これまではワンウェイの情報発信だったが、今回のこのイベントで高校生からフィットネスの未来についてのアイデアをもらえることで、初めて双方向の関係性が築ける、と期待しているという。

約3週間の
濃密なコミュニケーション

参加チームは北海道、東京池袋、東京笹塚、広島、福岡の5チーム。1チーム5名のメンバーで構成される。社長に直に提案をする機会に面白みを感じたから、自分の欠点である引っ込み思案を克服したかったから、友だちに誘われて面白そうだと思ったからなど、参加の動機はさまざまだが、全員が口をそろえて、あっという間にみんなと仲良くなったと話す。与えられた課題は「地域とフィットネスの未来」。自分たちの住む地域の人々の、心と体の健康のためにフィットネスの未来について考えるというものだ。参加者たちは、もともと地域の課題に自覚的だったり、フィットネスに興味があったり、ビジネスに興味があったりと、今回のテーマに向けて一緒に力を合わせて活動するベースがあったのだろう。

3月中旬、地域ごとに集まったメンバーたちは、エニタイムフィットネスの店舗を見学。その後、全国の参加者全員がオンラインで交流する機会を経て、それぞれの地域の課題とフィットネスの未来についてチームごとに検討。最終日のプレゼンテーションに向けて、全員が東京に集まった。会場では、各地域で参加者をサポートしたエニタイムフィットネスのFCオーナーや、株式会社Fast Fitness Japanの関係者など、約50名が高校生たちのプレゼンテーションを見守った。

地域ならではの
課題と提案

発表の順番はくじ引きで決まる。最初のプレゼンテーションを引き当てたのは広島チームだ。広島チームは、子どもの運動能力の低下という社会課題の原因が、オンラインゲームの普及と、老朽化による公園遊具の減少にあると仮説をたて、小学生を対象に運動とゲームを融合させたトランポリン×プロジェクションマッピング施設を提案。小学生でなくても行ってみたくなる楽しいアイデアだ。

広島チームの発表の様子
/

チーム全員が女子という福岡チームは、国際都市福岡という地域特性から、地域の未来を“グローバルで多様性が尊重される誰でも住みやすい都市”と設定し、運動と外国人との交流を組み合わせた提案をした。体を動かす世界の遊びをした後に、さまざまな国のお菓子を食べながら交流するという、子どもから大人まで誰でも参加しやすいアイデアだ。

福岡チームの発表の様子
/

東京笹塚チームは、若い人をターゲットにフィットネスを楽しみながら続けられるコミュニティを提案。運動をしない人にとって「運動=つらいもの」でしかないが、仲間がいれば運動を続けやすいと考え、運動だけでなく、ゲームやオンラインイベントなど一緒に楽しめるコミュニティを、ジムを拠点にして設立するというアイデアを発表した。地域の中核にエニタイムフィットネスがなるべきという提案だ。

東京笹塚チームの発表の様子
/

北海道チームは雪かきという北海道ならではの地域の課題にフォーカスした提案だ。高齢者にとっては大きな負担である雪かきを、若者と現役世代対応の除雪コミュニティの構築によって解決しようという提案。学生だけでなく地域の企業や団体も巻き込み、中長期的な視点で雪かきを「厄介者」から「バトン」へ変えたいという。

北海道チームの発表の様子
/

最後の発表となった東京池袋チームは、豊島区のママさん100人にインタビューを実施。さらに参議院議員、豊島区議会議員にもインタビューし、ママさんたちが運動しない理由として、費用が高い、子どもと一緒に行けないなどの課題を抽出。子どもを預けてトレーニングができる「ヘルシアプレイス保育園」を提案した。子どもたちにはヘルシーな食事を提供することで働くママさんの負担も減らすというアイデアだ。

東京池袋チームの発表の様子
/

最優秀チームは
地域性を意識した
チームに決定

各チームの発表に対して、他のチームから活発に質問や感想も出て、プレゼンテーションの時間は白熱した。高校生ならではの自由な発想とともに、地域の人にアンケートをとったり、議員に話を聞きに行ったりと、社会人も顔負けの調査力と行動力で、どのチームの提案も机上の空論ではなく、しっかりしたデータに基づいた実現性の高い提案になっている。発表を聞いていたFCオーナーのみなさんからも「そのアイデアはすぐにでも採用したい」「ぜひ応援したい」と熱いコメントが飛び出した。

全てのチームの発表が終わり個人投票と、チームごとの投票の結果、最優秀チームが発表された。

優勝したのは北海道チーム。

雪かきという北海道ならではの課題に着目し、若者と現役世代対応の除雪コミュニティの構築を、中長期にわたって検討し持続可能なアイデアとしたことが評価された。なにより、絶対に実現させたい、地域の課題を解決したい、というチームの熱意が多くの人の心に届いたようだ。

やれることではなく
やりたいこと
をやって欲しい

最後に土屋社長から、各チームに対して細やかな講評があった。
「地域ごとのチームで活動したことで場所によって課題が違うことに気づけたのではないか。大人は、やれることをやろうとしてしまい、できない理由を探す。しかし、地域の未来を担う高校生のみなさんには、ぜひやりたいこと、やるべきことをやって欲しい」と締めくくった。

今回参加した高校生たち一人ひとりと話をしてみると、皆しっかりと自分の言葉で意見を言うことができ、将来についても明確な目標を持っているメンバーが多かった。自分のキャリア形成や社会の課題に自覚的だからこそ、このイベントに参加したのだろう。最後にこのイベントに参加して何を持ち帰りたいかと聞くと、チームで活動することの楽しさやお互いの違いを認め合って尊重し合うことの大切さだと答えたメンバーが多かったことが印象的だった。普段の生活では出会えない、日本全国の仲間とつながりができたことが一番よかったと答えたメンバーもいた。また、このイベントに参加して改めて地域の課題に気づいたので、継続的に課題解決に取り組みたい、という答えも。特に優勝した北海道チームは、本気で雪かきの課題を解決したい、と熱い気持ちを語ってくれた。

その中でも、土屋社長の「やれることではなく、やりたいこと、やるべきことをやって欲しい」というメッセージは、メンバー一人ひとりの心に響いたようだ。

「希望や、目標は大きく持つことが大事だなと思いました。自分で線を決めて、これしかできないという考え方は本当によくないなと思って、やりたいことにチャレンジして、毎日、楽しく生き生きと過ごせるようにしたい」。

全国から集まったメンバーと交流し、大人たちのサポートを受け、自分たちで自分たちの未来を考えるという今回の活動は、短い期間ではあったが、確実に彼らを成長させたようだ。

フォトギャラリー

北海道チーム

/

福岡チーム

/

東京池袋チーム

/

東京笹塚チーム

/

広島チーム

/