SpecialVol.26

時間を確保してジムに行く!
~人生にタイムコーディネートを
取り入れよう~

文・ヘルシアマガジン編集部
写真・斉藤有美

皆さんの運動頻度はどれくらいですか? 毎日、週に数回、月に数回の人……。さまざまな頻度があるはずです。一方で「本当はもっとジムに行きたいのに」と思いながらも、「お酒を飲んでしまったから」「疲れているからやめておこう」など、つい「運動をしない言い訳」を探してしまう人はいませんか? 「ああ、今日もジムに行かなかったな」。そんな自己嫌悪に陥らないためには、どうすればいいのでしょうか。吉武麻子さんは仕事や生活のパフォーマンスを上げていく方法を、これまでに数千人に指南してきたタイムコーディネーターです。どのように時間と付き合えば、ジムで運動をする時間を確保することができるのでしょう。時間管理のノウハウが詰まった『目標や夢が達成できる 1 年・1 カ月・1週間・1 日の時間術』(かんき出版)の著書のあるタイムコーディネーターの吉武さんにお話を伺いました。

安心してください。
そもそも、人は怠け者なのです

運動時間を確保するにはどうすればいいですか?

自発的にジムに行く習慣がつくといいですよね。とはいっても、なかなか自分で決めたルールを守り続けるのは難しいものです。行かない日が続くと、「なんでできないんだろう」と思う人もいるはず。ですが、自己嫌悪に陥らなくて大丈夫です。そもそも、人は怠け者なのですから。では、どうすれば「自発的にジムに行く習慣が付く」のでしょうか。

それではまず、「何曜日の何時にジムに行く」と、具体的なスケジュールを決めてください。そのスケジュール通りに行けたら問題ありませんが、もし行けなくても大丈夫です。再設定すればいいのですから。そして、スケジュールと同時に「なぜ私はジムに通っているのか」も考えてください。例えば、「100キロのベンチプレスを上げたい」「5キロ痩せたい」なんて具体的な数字があった方が目標にしやすいですね。

ただ、ここからが大切です。数値的な目標だけでなく、必ず目標を達成した姿も具体的にイメージしてください。「100キロのベンチプレスを上げてどうなるのか」「5キロ痩せて何をしたいのか」。100キロを上げた後、仲間にベンチプレスを教えるのでも、スリムになってすてきな服を着て同窓会に行くのでもいいですね。数字の目標だけでなく、「どう生きたいのか」というような具体的な人生のイメージ(=ビジョン)が伴わないとなかなか続きません。むしろ、ビジョンがなければ「なんのためにジムに行くのか」が分からなくなってしまいます。

目標達成のビジョンを絵にしてもいいですし、SNSで発信してもいい。「私はこうなる」と、周りに宣言して家族や友人を巻き込んでいくと、頭の中でぼんやりとしていたビジョンが具体的になり、「自分の中でのやるべきこと」へと格上げされていきます。それは、あなたの生き方につながっていくでしょう。

後は、その目標に向かって進んでいけばいいのでしょうか?

いえ、実際に体を動かしてトレーニングをしていく中で、「あれ? ちょっと無理かも」と感じることもあるかもしれません。あまりにも実力とかけ離れた目的設定だったと気が付いた時点で初期設定を変えて大丈夫です。例えばこんなことに気が付くかもしれません。

  • とにかくたくましい体を目指していたけれど、今の自分は健康的な体が維持できればいいと気付いた。
  • 筋肉を大きくするために負荷のかかる筋トレをやっていたけれど、まずは基礎代謝を向上させるトレーニングのほうが優先度が高いと気付いた。
  • どうせ鍛えるならムキムキな体を目指さなければいけないと思い込んでいたことに気付いた。

これは、目標に向かって動いたからこそ気が付けることです。目標をかたくなに変えないで頑張り続ける必要はありません。現実からかけ離れた目標だったのなら、設定し直しましょう。目標は変わって良いんです。むしろ、目標は常に変わるものと考えてください。大企業だって目標を修正しますから。一度決めたことは何が何でも成し遂げるという「一貫性の原理」に支配されてしまうと、「これは失敗する」と感じていても、身動きが取れずにやり続けてしまう人もいます。目標を柔軟に修正して、前に進んでいける余白を残しておくことも大切ですね。

こんなお話をすると、「きっとあなたは計画通りに実現できる人なんでしょう」と思われるかもしれません。実は私も長年ピラティスをやりたいと思っていたのですが、なかなかスタートすることができませんでした。他にもやることがある、予約がおっくう、立地が悪いなど、やりたい理由よりやりたくない理由が多かったのです。ある時、ピラティスのスタジオを探していたら、カフェの近くにあることが分かりました(しかも混んでいないのです!)。子どもを送り出した後にカフェに行き、仕事をして、集中力が切れた頃にスタジオに行くというゴールデンルーティンが誕生しました。これは好きなことが重なったり、この場所ではこれをするなど、「やるための理由」がうまく重なった好例です。冒頭でお話しした「人は怠け者」ということを思い出してください。じゃあ、どういう環境だと自分がやらなくなるのかを考え、やらない理由をつぶしていくのです。

大切なのは
時間のコントロール権を
持つこと

だけど、どうしても面倒くさいという感情が生まれることも……。

そうですね。ハーバード大学のショーン・エイカーという人の『幸福優位7つの法則』(徳間書店)で紹介している習慣化テクニックに面白いものがあります。エイカーによると、人は取りかかるまでに手間がかかるのだそうで、その行動に対する手間を20秒間だけ減らすといいと書かれていました。例えば、前の日は「明日起きたらジムに行こう」と思っていても、いざ目覚めた時に「今日はやめておこうかな」と考えることはありませんか? そんな時はこの「20秒ルール」を使ってみましょう。例えば、トレーニングウエアを着て寝てしまうのです。そうすると、朝起きて着替える手間が省けますよね(笑)。目標に向かって行動するために、まずは小さな行動にして踏み出してみてください。たったこれだけのことで、自分自身をコントロールできるかもしれません。

『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』には仕事、生活、トレーニングに関するヒントがぎっしり。

この「誰がコントロール権を持っているか」はとても大切だと思いますね。私たちに与えられた時間は誰もが平等に1日24時間です。それなのに、多くの人たちがなぜ「時間がない」と思うのでしょう。これには以下の2つの理由があると思います。

「やらなければいけないことがありすぎて時間がない」
「やりたいことがありすぎて時間がない」

この2つです。これは似ているようですが、誰がコントロール権を持っているかが違います。後者の方はコントロール権が自分にありますね。もし、自分以外にコントロール権があって「やらなければ!」と思っているなら、いくら自分の時間の使い方を見直しても、根本的な解決にはなりません。重要なのは「自分が時間の手綱を握っている状態」であることです。

ただ、年を重ねると仕事もあるし、責任のある立場になると部下も見なくてはいけない。子育てや介護などをする必要が出てくるかもしれません。時間だけではなく、若い頃のような体力もありません。つまり、大人になると目標のために動ける時間は限られていくようになるのです。

そうすると、粗削りな計画ではすぐに計画倒れになってしまいます。ですので、スケジュールを立てる時は先に時間をブロックするようにしてください。トレーニングなら、「この日のこの時間はジムに行く」と決めて、時間をブロックします。ですが、自分との約束時間を一番後回しにする人は注意してください。誰かとの約束に、自分の時間を差し出してしまっては、いつまで経っても目標や夢を実現することはできません。自分が時間の手綱を握り、時間をブロックするのです。

自分の時間を差し出してばかりいたら、「今日もやらなかったな」と思い続けることになります。それでは頭も心も疲れてきますよね。大丈夫です。これまで動ける準備ができなかっただけなんです。人は準備がしっかりできていれば、動き出せます。ぜひ、皆さんもタイムコーディネートを導入して、自分の時間の手綱を握ってください。

Profile

吉武麻子

神奈川県生まれ。TIME COORDINATE株式会社代表取締役。大学卒業後、旅行会社勤務を経て、26歳で韓国留学。その後、現地法人でキャスティングディレクターとして24時間365日仕事に追われる日々を過ごす。帰国後、キャリアとライフイベントのはざまで葛藤した経験から、疲弊せずに毎日を楽しみながら仕事のパフォーマンスも上げていく「タイムコーディネート術」を考案する。「タイムコーディネート実践プログラム」や「タイムコーディネーター養成講座」を開講。また、シリーズ130万部発行の『時短・効率化の前に今さら聞けない時間の超基本』の監修や、タイムコーディネート手帳の製作販売、企業研修、時間の専門家として各種メディアにて掲載・連載執筆を行っている。プライベートでは2児の母。

https://time-coordinate.com/

『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』