SpecialVol.21

周南市の健康寿命を延ばす!
徳山病院と
エニタイムフィットネスの挑戦

文・ヘルシアマガジン編集部

山口県周南市にある徳山病院は、地域で暮らす人々のさらなる健康増進を目指し、2021年12月からエニタイムフィットネスとの連携を行っている。約1年半が経過し、病院とフィットネスジムの連携はどのような成果を生んでいるのか取材した。

健診受診者を
運動と食事指導でサポートする
「ヘルスケアプログラム」

Mさん(66歳)は徳山病院で受けた健康診断でいくつもの項目が引っかかった。体重、腹囲が基準値を上回り、中性脂肪の数値も高い、いわゆるメタボリックシンドロームといわれる状態だ。さらに、肝機能を表す数値からは脂肪肝が疑われた。

学生時代からソフトテニスを続けているMさんは、現在も週3回指導者として子どもたちに教えている。ただし指導者なので、自分はあまり動かない。もともと食べるのが好きで、朝からしっかり食べる。家にはお菓子やパンが常備されていて、間食も多かった。夜はお酒も飲む。食生活を変えたくはなかったが、お腹がぽっこり出た体形では、運動指導者として説得力に欠けるとは思っていた。そこに健診結果が追い打ちをかけた。

健診後、徳山病院に設置されていた「地域ヘルスケアプログラム(以下、ヘルスケアプログラム)」のチラシを見つけたMさんは一念発起し、なんとか体重を落とそうと考えて、病院に隣接するエニタイムフィットネス徳山病院店に入会した。

「ヘルスケアプログラム」は徳山病院で健康診断を受け、体重、体脂肪、肝機能、糖質異常、脂質異常、高血圧という指定の検査項目の内、2つ以上引っかかった方を対象に、生活習慣予防のための運動の継続をサポートする制度だ。このヘルスケアプログラムに参加すると、エニタイムフィットネス徳山病院店の1年間の月会費が特別価格(一般会員の半額以下)となり、資格を持ったトレーナーによるマンツーマンの指導が受けられる。

Mさんは、2022年9月に入会し、現在は週4~5回、1時間半程度のトレーニングを続けている。8カ月継続して、体重、体脂肪ともに順調に落ちている。何より、ぽっこり出ていたお腹がすっきりしたという。現在の見た目からは肥満とは思えない。

月に1回のカウンセリング日に密着させていただいた。まずは体組成計で定期測定を行い、前回の数値と見比べながらエニタイムフィットネス徳山病院店マネージャーでもある、トレーナーの山城憲治さんがアドバイスしていく。

月に1回のカウンセリングの様子

「筋肉量の数値があがっているのでいいですね。体脂肪はすぐには減りませんが、運動していないと筋肉量が減っていきますから、継続が大事です。体脂肪が25%を切ってきましたので、なるべくパンの代わりにご飯を食べるようにしたり、間食にお菓子を食べるのを控えたりして、次は22.5%を目指していきましょう。そこを切れば健診でも引っかからなくなるはずです。運動は脈拍を意識してやっていきましょう」

Mさんも体組成計の数値に満足気だ。
「山城さんの指導はとても分かりやすいです。筋トレをするのは初めてなので、自分に合うトレーニングが分からなかったのですが、いろいろ教えてもらって、現在のメニューで固定しています」

ステアクライマーからトレーニングを始めるMさん

最初は体が硬かったので、しっかりストレッチをするところからスタート。現在もまずストレッチをしてからトレーニングを始める。また、Mさんはもともと運動習慣があったことから、脈拍が上がりにくい体質だ。そのため、トレーニング前にステアクライマーを使用して脈拍を上げてから筋トレを行う、というメニューが組まれている。ストレッチ、クライマー、ベンチプレス、腹筋、レッグプレス、プルダウン、ウォーキングが最近のメニューだという。

「ベンチプレスは少し負荷を増やしてみましょう」。山城さんは体組成計の数値と、Mさんの体調を確認しながら、メニューを調整していく。

山城さんのサポートを受けながらベンチプレスをするMさん

「Mさんは好奇心が旺盛で、ベンチプレスや、スミスマシンにも興味を持って挑戦しています。逆にオーバートレーニングにならないように注意しています」という山城さん。トレーナーとの二人三脚だから、無理なく継続して結果を出せているようだ。

食事を変えたくなかったMさんだが、山城さんに食事に関してもアドバイスをしてもらい、間食はやめた。現在はトレーニングに通うことが生活の中心になっているそうだ。

ヘルスケアプログラム会員のMさん

「ヘルスケアプログラムで、とてもありがたい経験をさせてもらっています。この歳になってベンチプレスをやるとは思わなかった。エニタイムに通うようになって生活のリズムが整いました。もっと早く始めれば良かったと後悔しています。でも50代の時は仕事が忙しくてできなかったですね。今の目標は肥満解消。標準体型を目指したいです」

病院と
フィットネスジムの連携

徳山病院は地域の中核医療施設として、「私たちは患者さん、ご家族を援助します」を理念として掲げている。健診にも力を入れており、年間2,800人が利用している。しかし、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病と診断された受診者に「運動してください」と言っても、実際にどんな運動をしているかを把握することができないことに、高山理事長は病院ができることの限界を感じていた。そこからフィットネスジムとのコラボレーションを思いつく。

徳山病院敷地内にあるエニタイムフィットネス徳山病院店

徳山病院事務部統括補佐の友添直仁さんにお話を伺った。
「高山理事長は、医療とフィットネスが手を組むことで、地域の健康増進に貢献できないだろうかと考えたのです」

徳山病院事務局の友添さん

高山理事長のプレゼンテーションを受け、2021年12月にエニタイムフィットネス徳山病院店が敷地内にオープン。健診で数値が悪かった人はもちろん、体重や体脂肪が高い人にもヘルスケアプログラムを案内し、特に気になる人に関しては、病院担当者からエニタイムフィットネス徳山病院店マネージャーの山城さんに直接連絡し、対応を依頼している。

徳山病院の看護師、原田徳香さんにもお話を伺った。
「健康状態が良好ではない人に、いきなり薬による治療を開始するのではなく、まずは運動と食事で改善していただこうという取り組みです。これまでエニタイムフィットネスと試行錯誤を続けて、現在のフローができました」

看護師の原田さん

まず、健診で運動が必要だと思われる人には「ヘルスケアプログラム」を紹介。プログラム会員としてエニタイムフィットネスに入会していただくと、カウンセリングと体組成計を利用した測定を行い、トレーニングメニューを作成する。会員はトレーニングを開始し、1~2週に1度のトレーナーによるサポート、1カ月ごとのトレーニングメニューの更新、体組成計を利用した測定を定期的に受けられる。利用開始3カ月後に、徳山病院で採血・栄養指導・計測(身長・体重・体脂肪)、必要に応じて胸写・心電図検査を実施。結果により6カ月後に再度検査を受けていただく。1年後に運動と食事でどのくらい改善できているのかという経過を見守っていく、というのが現在のフローだ。これまで29名が入会している。

「運動や栄養指導が必要だと判断するのは医師なので、私はプログラムを紹介して、続けている会員さんが3カ月後、6カ月後に検査を受けに来た時に、がんばってますねー、と褒める役割です(笑)」。

原田さんはもともと別の病院の健診センターで、特定健診(生活習慣病予防のためのメタボリックシンドロームに着目した健診)に携わった経験があるそうだ。特定健診では生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善によって生活習慣病の予防効果が期待できる人には、生活習慣を見直すサポート(特定保健指導)を勧めている。

「ヘルスケアプログラムは、特定健診がやろうとしていることそのものですし、特定健診以上のものができていると考えています。今後成果が出るようになれば、健診に対しても、フィットネスに対しても新しい提案ができると思います」。

友添さんは、今後の目標について次のように語った。
「ヘルスケアプログラムは地域の健康増進が目標なので、今後、周南市の健康寿命が延びました、という結果が出るといいですね。このプログラムがきっかけとなり、運動の習慣化、食事習慣の改善ができると思います。健康のためには、栄養と運動と医療の三位一体が成り立っていることが大切で、ひとつでも崩れたら健康にはなれないので、この関係性を強化するためのサポート体制をつくっていきたいと考えています。山城さんと情報交換しながら続けていきたいですね」。

体形が変わって、
おしゃれを楽しみたくなった

仕事帰りにトレーニングに来た坂本和弘(48歳)さんもヘルスケアプログラム会員だ。もともと汗をかきたくない、運動もしたくないという文系人間。仕事で体を使うことはあっても、自分から運動をしたことはなかったそうだ。

ヘルスケアプログラム会員の坂本さん

「フィットネスジムは汗まみれなマッチョな人しかいないのではないかと思っていたので、自分は場違いなのではないか、疎外感を感じるのではないかと思っていました」。

しかし、徳山病院で受けた会社の健康診断でいくつかの項目が引っかかり、エニタイムフィットネスを紹介される。生まれて初めてトレーナーの指導で運動をすることになった。

「エニタイムフィットネスは皆さん挨拶もしてくれますし、マシンの除菌もしっかりされているので、気持ちよく利用できます」。

現在は平均週3~4回、仕事の都合もあるが多いときは週7回来ることもあるという。

有酸素運動はバイクを利用することが多いという坂本さん

「楽しいですね。筋トレはシステマチックで、結果が出る理由が分かるので、とても楽しくできています。月に1回体組成計で数値の変化を見ながらできたのが良かった。このマシンを使うとこうなったので、次の1カ月はこれをやってみます、というようにモチベーションを保ち続けることができました。最近は食べ物や、有酸素運動についても教えてもらいながら、メンタルもサポートしてもらっています」。

「坂本さんはモチベーションが高いのでメンタルのサポートというよりは、不安に思っていることを解消できるように心がけています」と山城さん。

坂本さんはスタッフとのコミュニケーションも楽しいと言う。
「とにかく、いつもお話をさせてもらっています。何かと声をかけてもらっていますし、私から話しかけることも多いです。良いお店は良いお客がつくると思っているので、山城さんにアドバイスされたことはやってみるし、疑問があれば質問してみる。エニタイムに入るまではフィットネスジムではそういうことはできないものだと思っていました」。

山城さんのサポートを受ける坂本さん

ヘルスケアプログラムのサポートがあることが運動継続の理由になっているようだ。坂本さんも最初は体が硬かった。筋肉量は多いのに、体が硬くてうまく使えていない。そこでまずはストレッチを重点的に行い、今ある筋肉が使えるようにする。半年くらい経った頃、ようやく筋肉が動いている実感が出てきたそうだ。体重も体脂肪も順調に減り、それから半年後の健康診断では数値も一気に改善した。

「それで気を抜いて年末年始に食べ過ぎてしまいました。トレーニングは続けていたのに体組成計の数値が悪くなっていたのです。そこから食事のアドバイスも受けるようになりました」。

「もともと朝と夜しか食事をしなかったのですが、山城さんに同化(アナボリック)と異化(カタボリック)について教えていただき、トレーニング前後にもたんぱく質をしっかりとるようにしています。あたりめや酢漬けイカは脂質が少なくほとんどたんぱく質だと教えてもらったので、間食にはイカ、風呂上がりのアイスクリームはシャーベットにするなど、脂質も抑えています。GI値についても教えていただき、パンや米は控えて、おそばやスパゲッティを食べるというように、美味しいものを我慢しすぎることなく、楽しみながらやっています。おかげさまで体調はすごくよくなりました。睡眠障害がありましたが、最近は寝つきも寝起きもよくなりました」。

「坂本さんはとても興味を持って話を聞いてくださるので、こちらとしてもやりがいがあります」と話す山城さん。

「今の目標は、ぴっちりしたレザーパンツを履くことです。体形が変わって姿勢がよくなるとおしゃれがしたくなるんですね。体形は心の支えになります。この歳になって初めてそう思うようになりました」。

坂本さんの息子さんもハイスクールパス(高校生無料利用制度)を利用してエニタイムフィットネスに通っている

「プログラムに参加しなければならない人はこれまで運動をしてこなかった人だと思います。このプログラムは経済面だけでなく、トレーナーさんの技術的なサポートがあるので、筋肉や運動のことを知らなかった人が、自分の体に対する知識を増やせるのがすごくいいと思います。周りの人にもこのプログラムを勧めたいですし、私もずっとトレーニングを続けたいと思います」。

健康増進のために
いろいろな人が
通いやすい店舗に

最後にエニタイムフィットネス徳山病院店マネージャーの山城さんに話を伺った。

エニタイムフィットネス徳山病院店マネージャー山城さん

「10カ月近くプログラムを実施して、10キロ近く体重を落とされた会員さまもいらっしゃいます。やる気がある人はやはり結果が出るので、これからも続けたいと言ってくださいます。Mさんのようにトレーニングがルーティン化して生活の中心になったと言ってもらえると、私も嬉しいですね」。

全国的に見ても新しい取り組みだと思うが、苦労はなかったのだろうか。
「私はNSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)の資格を持っているので、脂肪を落として筋肉を増やすことに関しては専門知識がありますが、肝機能や糖質異常、脂質異常などについては分からないことも多いので、勉強しなおしたり、病院の方にレクチャーしてもらったりと最初は大変でした。反対に病院のスタッフは、病気のことはよく知っていても、どういう運動をすれば効果が出るのかはご存じないので、お互いに情報共有をしています。病気によっては脈を上げすぎてはいけないなど、注意しなければならないこともあるので、会員さまの既往症についてはしっかり調べて、病院の方と密に連携を取り、運動の種類や量をコントロールしています」。

印象に残っている会員について聞いてみた。
「お店がグランドオープンして間もない時期に入会された最初のプログラム会員さんは、脂質異常、血糖異常など多くの項目で引っかかっていたのですが、週4回くらい通われて、1年後には数値が全て改善し、体重も10キロ落ちました。最初に担当した会員さまということもあり、とても印象に残っています」。

「病院と連携しているので、プログラム会員さまに限らず、健康増進のためにいろいろな人が通いやすい店舗にしたいと考えています」

ヘルスケアプログラムの会員にはオリジナルのトレーニングノートがプレゼントされる。これには、徳山病院の副院長と原田さん、友添さんと検討を重ね、栄養管理も含めて記録できるメモ欄がある。他のトレーニングノートとは違うヘルスケアプログラムだけのノートだ。

使いこまれたMさんのトレーニングノート

他にも、徳山病院に併設されているカフェ「ぷらり」とのコラボレーションで、パワーサラダやプロテインドリンクの監修もしている。トレーニングだけでなく、病院とのさまざまな連携を通して、会員のサポートをしている。

徳山病院と共同開発したパワーサラダとプロテインドリンク

「ヘルスケアプログラム」は、専門知識があるトレーナーの指導が受けられるので、初めて運動する人も安心して通うことができる。通いやすい会費も魅力だ。プログラム会員にはオリジナルのトレーニングノートもプレゼントされ、日々のトレーニングの記録をつけることで、自分の変化を可視化できるようになることが、継続のモチベーションにもつながる。なにより、医療との連携によって、体の変化をしっかりと自覚することができ、健康に対する意識が変わることが期待できる。このような医療とフィットネスとの連携は、今後全国的に広がっていくのではないだろうか。

※「ヘルスケアプログラム」の健康診断、検診等については
別途費用が発生致します。
※「ヘルスケアプログラム」に関しての問い合わせ先:
エニタイムフィットネス徳山病院店