TopicsVol.14

災害を生き抜くために
備蓄について考える

2021.09.01

災害は忘れた頃にやってくると言います。しかし、地震をはじめ、台風や水害など、実は私たちは災害と隣り合わせの生活をしているのかもしれません。また、近年ではそれに加えて新型コロナウイルスという世界規模の脅威にもさらされています。まさに私たちは災害の時代に生きています。では、私たちはどのような態度で災害に立ち向かえばいいのでしょうか。防災用品専門店『セイショップ(SEI SHOP)』店長の布山夕紀さんにお話を伺いました。

よりよい備えは、よりよい暮らしにつながる

水、食料、トイレ凝固剤は揃えておきたい。『サバイバルフーズ』(缶詰)の賞味期限は25年。おいしさも追求している。

『セイショップ』は1978年の創業です。当時、日本では食料品などを個人で備蓄するという概念は一般的ではありませんでした。 その頃は東海地震(南海トラフ巨大地震)の研究が活発になった時期でもあるのですが、「これからは人間の食料も、長期間保存しなければならない」と考えた創業者が、アメリカで販売されていたフリーズドライ食品の輸入を開始し、災害用備蓄食料品『サバイバルフーズ25』の販売を開始しました。やがて世間に「備蓄」という気運が高まり、食料の備えは、自治体や大企業、そして個人が準備しておく時代へと変化していったのです。

現在、私たちが販売している『サバイバルフーズ』は国内生産しており、賞味期限は製造日から25年です。発売当初の一般的な防災思想では、非常食の味はそれほど追求されていませんでした。しかし、私たちは災害時でもおいしい食事は重要だと考えています。災害を生き抜き、作業をして、復興をしていかなければなりません。おいしく、栄養価の高い物を食べ、精神的にも安心していただきたいのです。

『セイショップ』のコンセプトは「よりよい備え、よりよい暮らし」です。災害時でも普段と変わらない豊かな生活が送れるように、「防災用品」というジャンルからだけではなく、日常で使えるものをアウトドアや介護用品などからセレクトしています。『サバイバルフーズ』も、缶のままお部屋に飾っていても、違和感はないかと思います。暮らしの中に置いておけば、いざというときに「どこに置いた?」とはならないでしょう。

いざというとき、どのように対応できるか

ポータブル電源とポータブルソーラーパネル。大容量の蓄電池があればスマートフォンの充電はもちろん、扇風機や炊飯器も使用することが可能。

数十年以内に、首都直下地震(マグニチュード7程度の大地震。地震調査研究推進本部地震調査委員会が30年以内に7割程度の確率で起きると予測)、南海トラフ巨大地震(マグニチュード8~9の大地震が30年以内に7~8割の確率で発生すると予測)の発生が予測されています。

首都直下地震ではライフラインが途絶える期間が長いと予測されています。電気やガス、上下水道などのライフラインが寸断される状態が数週間にわたって続くおそれがあるのです。また、道路や鉄道が大きなダメージを受ければ、食料品の供給も途絶えます。電気・ガス・水道が復旧してもゴミ収集ができないかもしれません。政府は、大規模災害発生時に1週間程度は家庭で賄えるように備蓄を推奨しています。1週間はスーパーマーケットやコンビニなどで食品が手に入らないことが想定されるからです。

1週間と聞くと、「そんなにたくさん用意するのか」と思われるかもしれませんね。しかし、一般的な家庭ですと冷蔵庫や冷凍庫の中には3日程度の食料があるはずです。それを消費しつつ、非常食でつなげば難しい話ではないと思います。

1週間生活するにはどの程度の備蓄が必要?

3人家族ですと、1日3食×3人×7日で63食が必要です。『サバイバルフーズ』の大缶ですと、1缶10食相当。6缶で60食相当になります。水は1人当たり、2~3リットル(1日)が必要です。

さらに自宅待避の際はトイレの処理が必要です。水道が止まってしまうと、水洗トイレは流すことができません。避難施設にはトイレステーションができますが、たくさんの人が使い続けると不衛生になっていきます。トイレを我慢して病気になるケースもあるようです。おうちで気兼ねなくトイレを使えるといいですよね。

使用前にタブレットを入れておけば、薬剤が汚物を殺菌し、臭いと腐敗を防ぐという『ほっ!トイレタブレット』という商品があります。普段使っているトイレにビニールをかけて使用するので、心配やストレスが軽減できると思います。トイレ溶剤も1週間程度あると安心ですね。

備蓄に対する意識は変化している

かつて備蓄というものは、国や自治体が備えるものでした。しかし、災害の多い日本では家庭で備えるという「自助」の意識が近年高まっています。ご自身で備えるわけですから、「公助」では期待できなかった嗜好性を備蓄に反映させても問題はありません。

おいしいと思う食事を食べられるように備えれば良い。お菓子はもちろん、お酒や煙草だって必要な人は備えていく方が良いでしょう。「災害時なんだから我慢しなさい」と言われても、好きな物を長期間我慢するのは大きなストレスになります。災害時だとしても、好きなものを我慢せず、備えることがストレスの軽減になるでしょう。災害時の備蓄も、ストイックにならずに普段の生活の延長になればよいかなと考えています。

家族やご自身の嗜好や食べる量、予算などに合わせて、できる範囲から始めるのが一番です。一気に集めなくても、毎月買い足していくのもいいでしょう。少しでもいいので、まずは備蓄を始めてみるのがいいと思います。「大きな災害がいつ来るんだろう。そのとき、どうしたらいいんだろう……」と、何も準備をしないで不安に思い続けるより、備蓄をすることで安心を得ることができます。

食料備蓄も運用次第で無駄になることはありません。今、「ローリングストック」という考え方が一般的になってきました。これは、ある一定期間が過ぎた備蓄食料を食べていき、食べた分は買い足していくのです。それが面倒な人は25年保存できる食料を買ってもいいですし、ライフスタイルに合わせた備え方をしていけばいいでしょう。

普段からの運動が命を守る

大型の布は日よけ、防寒、赤ちゃんのケットなど災害時には重宝する。『いまばりショール170』。

車中避難をすると、エコノミークラス症候群になることがあります。これは食事や水分を十分に取らない状態で、長時間座って脚を動かさないでいると、血行不良が起こり血液が固まりやすくなるのです。避難所でもエコノミークラス症候群になることがありますので、定期的に運動やマッサージをすることが大切です。

また、水害や豪雨の際、逃げ遅れてしまうことが命の危険につながります。まずは自力で避難する体力がなければいけません。普段から足腰を鍛えて、避難所に自力で行けるようにしておきましょう。自力で歩くことのできない要介護者は、場合によっては誰かが背負う必要があります。体力に自信のある人でも、大雨の中、荷物を持って人を運ぶのは大変です。逃げ遅れをなくすための背負い具『おんぶらっく』という商品も販売されています。食料以外にも、ご家庭の状況に応じた防災グッズを揃えていくことも大切ですね。

一時期、ミニマリストや断捨離というものが注目されました。もちろん、不要な物は処分するなりリサイクルに回せば良いと思います。しかし、新型コロナウイルス騒動でお店から商品がなくなったり、頻発する自然災害を目の当たりにすると、備蓄を持たず、持ち物を最低限にするというミニマルな生活スタイルは、防災という観点で考えるとかなりリスクがあるかなと思います。

たとえ、災害でお店が閉まっても、「1週間や1ヶ月分くらいは困らない!」。そんな気持ちでいれば、いざ災害に遭っても冷静な判断や行動ができるように思います。ぜひ、ご自身のできる範囲で、ご自身のライフスタイルに適した物を備蓄することをおすすめします。

取材協力:セイショップ(SEI SHOP)
東京都千代田区四番町8-13
0120-108-565

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